第69話 もう、何が何やら

「死神さんの……お義母さん!?」


「よろしくね」


 お義母さんは、僕に向かってニコリと微笑みました。


「えっと……すいません。いろいろと混乱してて。透明だったこととか、急に死神さんのお義母さんが現れたこととか……。もう、何が何やら」


「あらあら。まあ、そうなるわよね。じゃあ、最初から説明しようかしら」


 そう言って、お義母さんは説明をしてくれました。


 本来、死神さんは、この辺り一帯で亡くなった人の魂を回収する仕事をしています。ですが今日、死神さんは、その仕事をしていません。将棋大会に出るために、有休を取っていたからです。そして、死神さんの代わりに今日の仕事を行っていたのがお義母さん。こちらでの仕事はもう終わったそうなのですが、そのまま帰るというのも嫌だったので、僕たちのもとにやってきたのだとか。


 ちなみに、透明になる力については、すべての死神が持っているとのことです。確かに、死んだ人の魂を回収する時、他の人に姿が見えていては不都合もありますよね。他の死神には、その姿は認識できるようですが。


「……死神さんも持ってるんですよね。透明になる力」


「もちろん持ってるよ。見せてあげる」


 そう告げるが早いか、パッと僕の前から姿を消す死神さん。まるで、そこには何もなかったかのよう。数秒後、ドヤ顔を浮かべた死神さんが、その姿を現します。


 これまで、僕は、死神さんが特別な力を使う様子を何度も見てきました。一瞬で僕の元に現れたり、ここにはない自分の所有物を手元に持ってきたり。ですがおそらく、死神という存在は、もっともっとたくさんの力を持っているのでしょう。


 ……僕、死神さんのこと、ちゃんと知らないんだなあ。

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