第33話 将棋部に入らない?
僕の横に立っていたのは、僕と同じ高校の制服を着た女生徒でした。背は、僕より少し低いくらい。一見年下のように見えましたが、胸のあたりにある黄色いリボンが、彼女が三年生の先輩であることを示していました。黒髪短髪。鋭い目つき。いかにも強気といった様子の先輩は、腕組みをしながら僕のことをまじまじと見つめていました。
「えっと……すみません。考え事してて」
僕は、先輩にペコリと頭を下げました。こういう時、すぐに謝った方がいいというのは、過去の生々しい経験から嫌というほど理解しています。
「……あんた、一年生よね?」
先輩は強気の姿勢を崩さず、僕に尋ねました。
「はい」
「将棋、好きなの?」
「そうですね。一応」
「ふーん……」
先輩は、僕に一歩近づき、先ほど以上に僕のことをまじまじと見つめます。まるで、僕を値踏みしているかのようでした。初対面の人にこんなことをされるなんて初めての経験です。まあ、ついこの間、死神という摩訶不思議な存在に出会ってしまいましたから。それに比べれば、こんなもの、全く緊張しな……すいません、嘘です。心臓が張り裂けそうなほどバクバクいっています。何とかごまかそうとしましたが、やっぱり駄目ですね。
数秒後、値踏みを終えたのでしょう。先輩は、一歩後ろに下がりました。そして、腕組みをしながら僕に告げます。
「よし、決めた。あんた、将棋部に入らない?」
「あ、お断りします」
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