◆番外編 暗黒街の皇子 3

 僕はギルドには行かず娼館に入り浸っていたた。

 噂を聞いた娼婦たちがただでもいいからヤラせてくれと来るのだ。

 僕はリノアとの最初の一回以外はお金を払ったことがない。

 そのうち逆に金をもらうことにすらなり始めた。




 そして他の組織の娼婦たちが仕事をしなくなったので、僕は狙われる羽目になった。

 だがそれも全て返り討ちにし、逆に『ブラックカンパニー』に吸収することになる。


 名目上の幹部は店長だが実際は僕が幹部みたいになってた。

 裏組織なので違法奴隷の斡旋などや禁止されている法外な金利での貸付などの仕事もあったが、僕は構成員の手助けをしていた。




◇◇◇




 そして、『ブラックカンパニー』の王都本部に招集される。

 正式に幹部を店長から僕に代えるためだ。

 店長と一緒に王都の地味なバーに向かう。


 僕たち以外は既に揃っていた。

 



「こんなガキが次の幹部たぁ、『静かなる狂犬』も堕ちたもんだ! はーっはっはっ!」


 店長にそんな二つ名があったのか。

 っていうか、絡んできたのはランベール支部を統括する幹部だ。


 僕の噂がランベールまで伝わっていて、ランベールの娼婦も僕のところに遊びに来たり、メイベルに鞍替えしたりしてたので、この幹部から恨みを買っていたのだ。


「この目障りなガキをブチ殺して、メイベルも俺様が支配してやんよ。いいだろ、ボス?」


「……好きにしろ」



 そう言うと他の幹部がそそくさと場所を開ける。

 幹部会ではあるが、丁寧に机が並んで行儀よく椅子に座るような会でもないので、少し広めの広間に人が集まっているラフな会だ。

 みんなが壁に下がればバトルスペースは十分に確保できる。



「またガリトンの悪い癖か…… 幹部候補だってそんなにいないんだがな」


 誰かがつぶやく。





「それじゃあな、ルーキー。さよならだ! 『デッドリーレイド』!」


 ガリトンが彼の固有スキル【デスハンド】の固有技を使い両手の掌で僕の胸を強打する。

 デッドリーレイドを受けた者は即死する。

 そして、僕は倒れるはずだった。



「……なん……だと……」



 ガリトンは目を限界まで見開き驚愕の表情のまま倒れ、二度と起き上がらなかった。



「この人死にましたけど、別に構いませんよね」


「ああ、私は『好きにしろ』といったからな。おまえがメイベルとランベールの両方を統括しろ」




◇◇◇





「クラウスさん、どうして無事なのかお聞きしても? あいつはバカでしたが実力は折り紙つきでした」



 メイベルに帰ってきた僕に『静かなる狂犬』の元店長が聞いてくる。

 今は僕の立場が上になってしまった。

 元店長は牙を抜かれた犬のような気がしなくもない。



「僕の固有スキルの効果の中にそういうものがあるんだよ」


「……そうですか」


「これ以上は聞かないで。無闇に部下を減らしたくないんだ」



 自分の手の内を晒すバカがどこにいるのだ。

 結局元店長には言わなかったが、僕はガリトンの攻撃を受けた直後の僕と彼の状態を交換したのだ。


 デッドリーレイドは高確率の即死技。

 そのかわり一日一回しか使えない。



 【交換】スキルが上手く発動せず僕が死ぬ可能性があったけど、元店長から交換した【豪胆】スキルがあったので僕は躊躇うことなくこの戦法を取ることができた。

 こんなことしなくても僕よりステータスが低かったガリトンを殺すのは簡単だったが、他の幹部がいる手前、僕に迂闊に手を出すと即死技でも反射されると思わせればいいだろうと思ったのだ。


 ハッタリを効かせられないと裏社会では長生きできない、と元店長が言ってた。





◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 ゴールデンウィーク用の特別編です。まだ続きます。


 ガリトンとの一戦は、即死技が当たりさえすればクラウスを倒せるんじゃね? というところから適当に思いついたものです。

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