3-2 秋刀魚討伐
晩飯を済ませ、約束した時間に野原に来た。
そう、この野原はヒカリたちと初めて出会った場所である。
すでに集合場所にはヒカリが来ていた。
夜の野原で彼女とデートなう。とSNSで投稿しても物凄くバズりそうなくらいヒカリと夜の野原がマッチしている。
「来たね。」
ヒカリはそう言うと大剣を構える。
俺は食事を済ませた後、ヒカリに頼み込んで剣術の稽古をつけてもらう事になった。
「私が教えられる剣術なんだけど、教えるってなると基本中の基本までしか教えられないかな。それでもいいのなら。」
俺的には人のツテがこっちの世界には全くと言って良いほど無い。
よって基本的な技だけでもヒカリに教えてもらうことでこれからも生きていけるし、何なら明日の龍との戦いにも何か通用するかも知れない。
俺はコクリと頷き指導を始めてもらった。
「剣術は大抵の場合身体の一部を軸にして発動させるの。それで、今から教えるのはお昼に見せた「肩並行斬」っていう初級レベルの技よ。もう一回だけ見せるからしっかり覚えてね。」
ヒカリはそういうと近くにある木に対して正面に立った。
そしてヒカリは右手に剣を持ち、剣先を木に合わせ、刀身は地面と平行になるように構える。その際、身体を半回転させ、左肩が前に来る状態にする。
フィーン。
ヒカリが構えた直後剣から甲高い音とともに剣がキラキラと光り始めた。
タッタッタッタと地面を蹴り込み、剣先と刀身はそのままの状態で身体は構えを崩しながら木に向かって突っ込んだ。
スパン。
木を切りつける時、手首を返して右上から左下に振り下ろし、木には綺麗な斬り込みが入り、木の上部が倒れて行った。
「これが「「肩並行斬」」基本型一連撃横切りとも呼ばれるわ。」
そう言いヒカリはやってみて。というので見様見真似で腕を伸ばしてみる。
…。
「こうか。」
…。
「こうよ。」
ヒカリは俺の後ろに立ち、剣の柄を持ち俺の腕を勢いよく伸ばし、半回転させた。
フィーン。
腕をかなり伸ばし、痛くなるくらい伸ばしたことにより発動に必要な構えになるらしい。
「地面を思いっきり蹴って!」
その声と同時に俺は飛び出し、お辞儀をするような形になりつつも手首を返し木に切りかかった。
ズバーン。
断面はだいぶ不細工ではあるが何となく完成した。
「最初にしてはいい感じじゃないかな。ユウキ本人も少し手応えはあったと思うから後は練習量を増やして完璧にするよ。」
そういうとヒカリは何やら魔法の詠唱を始めた。
「今ここから半径5メートルに結界を張ってその範囲内にケルベロスが召喚される魔法をかけたから太陽が昇るまでやってね。あ、ちなみに5分に2匹のペースだからちんたら出来ないよ。」
「これで、50。」
ヒカリが帰ってから今の所5分に2匹のペースは守れている。
体力的な面で言うともう限界が近いので少し休憩する時間が欲しい所である。
と言うより睡魔がちょこちょこ襲いかかってきているのでそろそろ危ないと思うから次に出てくるケルベロスが出てくるまでほんのちょっとだけ大岩に寝っ転がって目を瞑ろうと思う。
決して寝る訳じゃないからな!
「マジかよ…。」
しっかり仮眠を取ってしまい、起きたらケルベロスが・・・・60?くらいまで増え上がっていた。
俺は体を起こし、素早く剣を構えて「「肩並行斬。」」を発動させる。
疲れが取れたのか寝る前よりケルベロスの動きが良く見える。一歩の踏み込みが大きくなったり技と技が踊りの振り付けのように繋がったりと動きが良くなっていることを実感していた。
60匹近くいたケルベロスはものの20分ちょいで片付けてしまった。
動きが良くなったので動きを複雑化にさせることに成功させた。
まず「「肩並行斬。」」を普通に発動させる。ケルベロスを切った後、身体を半回転し後ろを向く。
その間に剣を肩の高さまで持って来て置き、次のケルベロスの正面と向かい合ったタイミングで地面を蹴り、連続で「「肩並行斬。」」を発動させることに成功した。
他にもケルベロスの手前で急ブレーキをし、ケルベロスの頭上を飛び越え、空中にいる間にもう一度「「肩並行斬。」」を発動させたりと自由自在に「「肩並行斬。」」を使えるようになった。
「おはさん。」
ヒカリの声がし、後ろを振り返るとヒカリが来ていた。そして太陽も昇っていた。
意外にも集中していたのか太陽が昇ったことに気がつかないなんて。
「おはさん。ってなんだ?こっちの挨拶か?」
ヒカリはそうよとばかり頷いた。
「だいぶ前から見てたけど随分発動までのインターバルが短くなったね。」
「ヒカリ大先生にそう言ってもらえると嬉しい限りですって分かった分かった。痛ぇから柄の部分で腹突くな。」
ヒカリは顔を赤くしながら気が済むまで俺の横っ腹を突きまくった。
恥ずかしがり屋め。
「さて、余計なことを言ったユウキには今からテストを始めます。」
またかよ。学生の大半が、いや99%が学生生活の中で嫌いなイベントは?とアンケートを取ったら「テスト。」と答えるくらい嫌われているイベントだ。
まだ中間テストや期末テストしかしない先生ならまだいいが一区切りつくごとにテストをする先生に限っては絶対裏で「まじあいつ毎回テストするよなー。マジだりぃんだけど」などと大体言われている。
そんな忌まわしき存在を今からやろうと言うのか。
「すっごい嫌そうじゃない。でも決めたことだから。はい、構えて。」
俺は渋々剣を構える。
「今回出すのは大型モンスターのヴァイオレットラビット。ケルベロスの進化系よ。」
待って、そんな名前のうさぎ怖い。しかもケルベロスは犬科だけどうさぎはウサギ科なんだよね。
絶対進化しない並びなんですけど?しかも大型モンスターじゃないだろ。
ちょっとこっちの生態系を調べてみるのも面白そうだな。調べ甲斐がありそうだ。
ヒカリはすぐさまうさぎを召喚した。
大体ビル4回分の高さもあるウサギともなれば良くみる可愛いお顔をしていても大きさを見たら可愛くねぇな。
「始め。」
ヒカリの掛け声とともにうさぎは大きく飛び跳ねた。
元がビル4階ほどの大きさがジャンプするもんだから飛びすぎて空で豆粒になった。
ドシン。ピョーン。
ドシン。ピョーン。
飛んでいる最中は見失うほど高くまで飛び、着地と同時に飛ぶので斬りかかるタイミングが掴めない。
が、俺はずっとおんなじテンポで飛ぶことに気づいたので着地の瞬間に…。
フィーン。
狙った通りうさぎが着地した瞬間にうさぎの左足を切った。
そして体制が崩れた所を見逃さず、左足から駆け上って行き、うさぎの首を踏み台にして飛び、うさぎの真上からもう一度「「肩並行斬。」」を発動させる。
「おりゃぁ。」
うさぎの頭を切り落とし、うさぎをしっかり討伐した。
「お終い。ユウキあんた剣の才能あるかもよ。「「肩並行斬。」」を進化させちゃうなんてさ。」
どうやらヒカリが言うには最後に使った技は「「肩斬。」」と言い、「「肩並行斬。」」と違い、切り込む方向が決まっていないという特性を持つらしい。
んまぁ天才肌の俺ちゃんにかかればこんなもんなのよ。
なんちゃってね。
「魔法は時間かかるしまた今度だね。」
あれ?そういえば俺、魔法使えるよね?なんですっかり忘れてたのかなー。
「「ファイヤー。」」
「ドヤ顔しないでくれる?その顔うざいから。」
意外とこいつの言葉って心に来るものがあるんだよな。
「あっ、もうそろそろインドラが起きる時間だし帰ろっか。」
ヒカリが二つ目の剣術「「ビクトリースラッシュ。」」について説明したところだ。
「俺まだ動きの確認してないんだけど…。」
「帰ったらインドラが不貞腐れてていいならやろっか。」
ヒカリのイヤラしい笑みを見せてきたのでとてつもなく面倒なことが起きる予感がしたので諦めることにした。
「大丈夫だよ。コツは教えたし。死にそうになったら使えるよ。」
そんな投げやりな返答をされながらも俺とヒカリは武器屋に帰った。
俺死にそうになったら龍に身体の主導権奪われるんだけど。
と言う言葉はなぜか出なかった。
ステータス
能力《アビリティ》 ??
剣技 肩並行斬
魔法 【初級】 【中級】
ファイヤー ゲイル
ウォーター ライジング
アース
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