039 第十五話 ラミアのダンジョン 02
◆これより視点は一時アリサへ。
「ユーシスもそうやってレッサーラミアに魅了されたことがあって……て、聞いてます?ケンツさ……!?」
返事のないケンツさんに、少し苛立ちながら私は振り向いた。
そして絶句!
「なっ!?」
― ビクン、ビクン……
「ふにゅぅ…………」
そこにはレッサーラミアに身体を巻きつかれて、色白な生爆乳に顔を埋め窒息して痙攣しているケンツさんの姿が!
「ケ、ケンツさん!?」
「うふふふふふ……」
― サササササァーーー………
「あ、待て!」
レッサーラミアは不敵な笑みを浮かべ、ほとんど音もたてずに凄い勢いで去って行った。
あとにはポツンと私一人。
「えー、ちょっと待ってよ。こんなアッサリと拉致されるなんて……」
レッサーラミアは決して侵入者を放置しない。
男なら魅了して隷属化もしくは種馬にするが、女は容赦なくボコボコにしてダンジョンの外に放り出す。
次に現れるときは、恐らくケンツさんを魅了して、私をボコボコにしようとぶつけてくるはずだ。
幸いにして私には魅了を解く特殊なアイテムを常備している。
ケンツさんと接触さえすれば救出できる!
「ふぅ……」
私はその場で待つことにした。
やがて――
― コツーン……コツーン……
大理石の床を誰かが歩いて近づいてくる。
「来たわね……」
魅了され、目の光を失ったケンツさんを先頭に、レッサーラミアが5匹も姿を現した。
そしてケンツさんは私の姿を見るなり抜剣し、いきなり襲い掛かって来た!
「フンッ!」
― ブオッ!
全く加減の無いケンツさんの斬撃!
それをバックステップで軽く躱す。
「うーん、完全に魅了されちゃってるなぁ……」
周りでは、レッサーラミア達がすでに勝ったつもりでいるらしく、ニヤニヤと眺めている。
どうやら今のケンツさんの太刀筋を見て勝利を確信したようだ。
「悪いけどあなた達の思い通りにはならないわ!」
ケンツさんは強い。だけどやはり私の敵じゃない。
次に向かって来たらさっさと魅了を解除しよう。
そう思っていた矢先……
「
―ウネウネ……
「げっ!」
突然足元から湧いて出た鋳薔薇の触手!
そうだった、ダンジョンに入る前に、私の持つほとんどの魔法をケンツさんの
大きくジャンプして、危なく触手責めされそうになるところを躱す!
「あ、まずい!このパターンは!!!」
そう、
「
― ブボボボボ!
思った通りケンツさんは、ジャンプの着地点を狙って
「くっ、捕まった!でもこんなものくらい……彗星斬で……はっ!?」
― パリッ……ピシッ……
ケンツさんの周りでエアスパークが発生してる……これは!?
「も、もしかして今度は私の上級雷撃魔法!?」
「
― カッ……ガラガラガラ!ドゴゴオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
驚いた私は防御動作が遅れ、
―ブシュゥ……ブスブス……
「うう、やってくれたわね……」
白銀の
「セ、
キラキラと金色の粒子が身体を纏い、瞬時にして完全回復!
「ケ、ケンツさんだと思って油断した……魔法戦に持ち込まれたら非常にやっかいだわ、早く仕留めないと……えっ!?」
もうこれは遊んでないで、剣技で一気に攻めようと思ったとき――
「
「えええっ!?」
― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
ケンツさんの力が一気に膨れ上がり、ビリビリとした空気が伝わってくる!
「しまった、魔法式
まさかこれも使いこなすなんて!
しかし今のケンツさんでは身体強化は2.5倍までが限界のはずだ。身体が慣れていない為、それ以上の身体強化は激痛に襲われているはず……
「ヤアアアア!」
― ザンッ!ガキンッ!シュバッ!
しかしケンツさんは表情を全く崩さずかかってくる。
「くっ、魅了の影響のせいで痛覚が麻痺しているんだわ!」
― キンッ!バシュッ!ズバーーーーーーッ!
「流石に強い!……それでも私の敵じゃないみたいね……うん?」
ケンツさんの口元が動いている……もしかして何か伝えようとしているの!?
「ブツブツ……ブツブツ……」
間違いない、ケンツさんは私に何か伝えようとしている!
なに?なんなのケンツさん!
― キンッ、ガキンッ!バシュッ!
私はケンツさんの斬撃を払いのけ、一気に懐深くに入り込む!
「ケンツさん!どうしたの?何が言いたいの?」
「オ…… …… 」
「お?」
「オッパイ」
「は?」
「オッパイ!オッパイ!」
「はい?」
「パフパフ、オッパアアアアアアアアアアアイ!
オマエノ オッパイ ハ ナニイロ ダアアアアア!」
「…………」
― ザンッ!
「あぶなっ!」
だあああああああああああああああああああ……
一気に身体が脱力して、危なくケンツさんに斬られそうになった。
気にした私がバカだった!
魅了されてオッパイに憑りつかれているだけじゃないの!
このおっぱい星人め!
付き合いきれない、もうさっさとケリを付けよう……ん?
― パリッ……ピシッ……ジジジジジ……
ケンツさんが一瞬間合を取る。どうやら大技を放つようだ。
「魔法剣、
― ガラガラガラ、ドッシャーン!!!!!!!
「ほら来た!
私も聖剣に雷を纏わせ、自分の最大剣技で応戦する!
― バリバリバリ、ドッシャーン!!!!!!!
どちらも雷系の剣技!双方の雷斬波がぶつかり合い、激しいスパークと耳を劈く轟音が広間内に大反響する!
「グボオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
私の放った雷帝彗星斬は、ケンツさんの
「ふう、やったかな?」
「グフゥ……」
バチバチと空中放電が続く中、ケンツさんは剣を杖代わりにして立っていた。
「わ!あれをくらって倒れないなんてケンツさんもやるじゃない!」
ま、そうは言ってもケンツさんはすでにボロボロだけどね。
「じゃあケンツさん、大人しくなったところで魅了を解いてあげるね」
― シュルリ
私は腰に巻いているホルスターからあるモノを引き抜くと、ケンツさんの後頭部目掛けて一閃!
― スパーン!
広間内に乾いた心地よい音が響く!
「うべっ!……はっ、俺は一体何を!?」
ケンツさんの後頭部を一閃したあるモノ……
その正体とは……ハリセン!
そう、ケンツさんの魅了を強制解除したこのハリセンは、スラヴ王国の英雄的大魔術師、ダーシュ様作の【状態異常を即時回復させるハリセン】なのだ。
この世界は召喚勇者達による婦女子への魅了被害が後を絶たない。
私と想い人のユーシスは、旅に出る際に魅了対策としてこのハリセンを頂いた。
そして何度も魅了被害に合いながらも、このハリセンのおかげで魅了被害から脱出している。
「ぎゃあああああ、なんか体中が痛てえええええええええええええ!!!!」
― ゴロゴロゴロゴロ……!
魅了が解けたケンツさんは、身体強化4倍の負荷と、雷帝彗星斬のダメージが一気に押し寄せ、全身を襲う激痛にのたうち回る!
そののたうち回るケンツさんをヒールで回復!
「はひぃ、し、死ぬかと思ったぜ。なんて激痛だよ……」
「ケンツさんはこれで良し!さあ、次はレッサーラミアを一掃して……あ、あれ?」
― シーン……
すでにレッサーラミアの姿はどこにも無かった。どうやら今の戦いぶりに恐れをなして退散したみたい。
「まあいいけどね……それより転移装置は?転移装置はどこ!?」
私は転移装置がないか探す。
今まで見て来たラミア神殿では、大広間の奥に転移装置(転送装置)の
きっとここも同じようなものがあるはず。
そしてそれはやはりあった!
「あった、見つけた!」
「お、本当か!?やったな!」
大広間の最奥で、私達はついに島に移動するための転移装置を見つけたのだった!
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