第159話
何日かぶりの、七星と一緒の夜の寝室。
七星が持ってきたペットボトルとスマホをヘッドボードに置いて、ベッドに座った。
僕もスマホを置いて座った。七星の横に。
そしてその肩に凭れた。
「ごめんねイヤな思いばかりさせて」
七星はすぐに僕の肩を抱いて、くすって笑いながら旋毛にキスをしてくれた。
「真澄は本当に本当に里見さんが好きだったんだな。でもって本当に本当に俺が好きなんだな。って、思ってる」
「………え?」
「これできっちり終わりだからな‼︎オレには大事なコイビトが居るんだからな‼︎ってオーラが真澄からすげぇ出てる」
「僕はオレって言わないけど………」
「うん、でも、そういうオーラ」
「オーラって」
「うん。でも、当たってるだろ?」
「………うん」
「大丈夫。ちゃんと伝わってる。だから俺は大丈夫」
伝わってる。
だから七星は。
僕は少し身体をずらして、七星の首に腕を絡めた。
七星の熱い、大きな身体。
僕を、僕の心までを抱き締めてくれる、その。
「で、俺は今から真澄を抱けばいいの?」
「………あ、ううん。いいよ。それこそイヤでしょ?下に里見が居るのに」
来ないと思いたい。でも、もしかしたら僕たちが何をしているか、確認しに来るかもしれない。
それでもいいって、それぐらいの気持ちで僕は七星が好きで、里見への気持ちは過去のものだよっていうつもりでのこのパジャマで、さっきの言葉なだけで、本当にそうしようとは。
「俺は抱きたいけど」
「………七星」
本当に、とは。
七星に悪すぎて思っていなかった、のに。
「真澄にとって里見さんは過去の人、今は俺がコイビト。それを里見さんにしっかりきっちり知らしめたい真澄に協力するのが、今のコイビトである俺の役目じゃね?」
里見が、もしかしたら確かめに来るかもしれない。
絶対来ないでって言った僕の言葉に、何かを………僕が里見に抱かれるのを想像して。
里見は里見で、きちんと僕を終わりにするために。
もう、万にひとつも可能性がないことを自分自身に知らしめるために。
僕たちは、そこまでしないとピリオドが打てない気がして。
時間の長さは、想いの深さ。
「俺の役目、全うさせて」
「………七星」
「真澄だけじゃない。里見さんだけじゃない。俺だって本気で真澄が好きなんだ。だから俺だってその本気、見せる。真澄に。里見さんに」
僕はそのまま七星に組み敷かれた。
見下ろされる。七星に。
僕は、僕を見下ろしている七星の目元にそっと触れた。
すごい目をしている。
初めて見る目。
七星はいつも穏やかに優しく僕を見つめてくれる。その目が、今は。
射。
射る。
射られる。
射られている。
七星は、本気だ。
僕を好きなのも、僕を抱こうとしているのも。
その本気を、七星は七星自身にそう示し、僕に示し、里見に示そうとしている。
今日は抱き潰されるかもしれない。
七星の本気を、身体に叩き込まれるかもしれない。
身体がぞくっと、震えた。
「七星」
僕が呼ぶのと、七星がドアの方に意識を向けるのが同時だった。
里見が………居る?
僕には聞こえない。分からない。
「なっ………」
七星。
もう一度呼ぼうと思った口を、塞がれた。七星の口で。
そして僕は。
どんなに声を抑えようとしても抑えられないほど激しく、深く、深く深く深く。
七星に………抱かれた。
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