第99話
すぐに始まった2回目は、いつもの七星だった。
焦ったいぐらい優しく優しく、僕の身体を行き来する。いつもの七星。
七星に言った通り、身体の相性というものがあるのなら、七星と僕はすごくいいんだと、こうして七星を受け入れるたびに、七星に貫かれるたびに、思う。
七星の動きに合わせて、七星のネックレスが揺れる。
七星の下で、それに触れた。いつものように。
「何か、あった?」
スピードが落ちた。七星の。腰の。
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりの合間に、聞かれた。
だから、話した。
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりの合間に。
前にも話したことがある、里見にもらった小さな天球儀のこと。次に会う約束のように交換していたこと。でも最後は交換しなかったこと。しなかった理由が、僕が思っていた理由と、里見の理由が違ったこと。その天球儀が指輪になることも、隠さず。
そして、本題。
言うのに少し躊躇った。言うのを、行為の後にして欲しくて、もっと動いてって言った。強請った。
でも七星はダメって。言ってから。真澄が全部俺に何を言いに来たのか言ってからって、ゆっくり、ゆっくり、抽挿を繰り返した。
だから僕は観念して、七星の逞しい身体に腕を絡めて言った。
土曜日まで、昔みたいにその天球儀をつけて欲しいと言われたこと。
でも僕が七星とお揃いのネックレスと一緒にはつけたくなくて、でもできれば土曜日までは僕も天球儀をつけていたいと思っていること。
もしも七星が許してくれるなら、その間ネックレスは七星に預かっていて欲しいこと。里見が帰ったらまた七星につけて欲しいこと。
全部を。
七星にゆっくりと、穿たれながら。
「七星が、好き」
好きだから、無断で外すのはイヤだ。
そしてもし、七星が。
これが里見と過ごす最後でも、もしこのネックレスを七星が外すなと言うのなら、僕はこれを外さない。
里見の小さな願いの、小さな天球儀をつけられなくても、だ。
七星がイヤなら。七星のイヤだと言うことは。僕は。
そう思うのに。
僕は、本当は七星がイヤだと思っていることを、やっている。
七星は、僕が里見と僕の家に、近いうちに七星と暮らすあの家に居ることを、本当は。
イヤ、だよね。当たり前だよね。いいよって言ったのは七星だけど、それは僕がいつまでもいつまでも、今でも里見のことを引きずっているから。
決着の時間。最後の時間。
七星はイヤだと思う自分の気持ちよりも、僕のそれを優先させてくれているんだ。願っているんだ。
そんな七星に僕ができるのは。
七星のスピードが上がった。
僕の声もあがった。
それ以上は何も。
僕はもう、考えられなかった。
「………いいよ」
「………」
スピードが上がって、そのまま………の後。
身体もそのまま、繋げたまま、七星が僕の右耳に言った。
「いいよ。外しても。いいよ。俺が持ってる。真澄のも俺がしとく」
首。
ネックレスの上を、七星の唇が這う。
僕は七星を、七星の下から抱き締めた。
これが七星の、僕への愛情。
感じて。
いっぱいの、愛情を。
僕はこの人を、七星を、この先ずっとずっと好きでいるだろうって、思った。
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