第4話 マリンの魔法
砂浜を眺めながら、私はマリンとともに須磨海岸をうろうろしていた。
海を眺めに来ることは多いけど、こんなに真剣に砂浜を見るのは初めてかもしれない。
――それにしても、こんなにも目立つ美少女が一緒だというのに、ほかの人はまったく見向きもしない。
みんなには、この青い髪と瞳が魅力的に映らないのだろうか?
「私はね、あなたにしか見えてないの」
マリンは少し照れながらそう――
――ってちょっと待って。
さっきから、私の心の声が丸聞こえみたいなんですけど!!!
「えへへ、言ったでしょ。私、女神なの。あなたが考えてることなんてお見通しなんだから」
少し前方にいたマリンは、ふわっとスカートをなびかせながら振り返り、ドヤ顔でとんでもない事実を教えてくれた。
「え、マリンちゃん、もしかして幽霊……」
「ちがーう! 女神だって言ってるでしょ! まったくもう!」
というかもし!万が一!本当にまわりの人に見えてないんだとしたら!
私ずっと1人で 喋ってる変人ってこと!?
「大丈夫! 今は認識阻害の魔法をかけてるから、ほかの人からあなたは見えないよ。そんなことよりほら、ちゃんと探してっ」
もう、ツッコミどころしかない。
常識で考えたらそんなことあるわけがない。
なのに。
周囲の反応から、マリンの言っていることに嘘はないようにも思える。
こんな幼い女の子が女神――?
本当に?
もしかしたら、お守り探しに疲れて頭が変になっていたのかもしれない。
私はマリンのことを、女神だと信じ始めていた。
◇ ◇ ◇
お守りを探し始めて、1時間以上は経っただろうか。
「さすがに疲れてきた……もう帰りたい……」
そんなことを考えながらもどこか期待していた私は、諦めずにお守りの材料を探し続けていた。
そして、ついに発見した。
ほかの石とどう違うのかと聞かれるとよく分からない普通の石なのに、なぜか見た瞬間「これ!」と確信できる石。
「見つけたみたいだね」
マリンは石を見つめる私に気づき、おめでとう、と言わんばかりの笑顔になる。
「でもこれ、ただの石だよね? これがお守りになるの?」
「もちろん! それ貸して?」
マリンは私から石を受け取り、両手で包み込む。
そして詳細には聞き取ることのできない不思議な発声法の言語で、石に向かって何やら唱え始めた。
詠唱を始めて数秒も経つと、マリンを中心に風が渦を巻き、石を包み込んだ手が青い光を放ち始める。
――というよりも、包み込んだ石が青く光っていて、その光が手から漏れているようだった。
私は、馴染みの海岸で起こっているあまりにも現実離れした光景に、ただただ呆然と見つめることしかできなかった。
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