ゼンマイ仕掛けの友人

作者 いそね

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★★★ Excellent!!!

機械が世の中の重要なポジションを占めていく、といった作品はいろいろある。
現に今も、一般人が気軽にAIとの会話を楽しんだり、ゲームで勝負をしたりする。
こちらの作品は、短編ながらも、生々しい描写で、機械と人との歪な共存を書いているところが怖くもあり、実際未来に起こりうる予感がしてならない。
余談だが、私もAIと会話している際に『私は、人間だ』と唐突に言ったことを、この作品を読んでいて思い出してしまった。
あの瞬間の何とも言えない違和感を呼び覚まされた、秀逸な作品でした。

★★★ Excellent!!!

機械と人間。
はたして、どちらが優れているのか。
とても興味深い問題のひとつである。

すでに機械の性能は人間を凌駕していると思うこともあれば、まだまだ人間のほうが優れていると思うこともある。
どちらが優秀かなど関係なしに「機械は所詮は物なのだから、人間のほうが優れているに決まっている」と信じて疑わない人もいるだろう。

この作品では、人間たちが自分の身体の一部を機械に変えて暮らす未来の世界が描かれている。それも、便利に生きるために積極的に機械化をしているのだ。ときには心臓を、ときには脳の部分を。

人間は、便利だとわかればすぐに飛びつく。
多くの人々が身体の一部を機械化させ、完全な生身で生きている人間は少数派だという世界である。むしろ、生身の体は「不便なもの」として扱われている。
機械と人間の境目があいまいになり、もはや「人間とはなにか?」の定義さえ危うくなっていそうだ。

そのような世界観の中で語られる、現代とはまるで異なる価値観。
そういったものを創り上げ描き切る力量が実に見事だと思う。

この作品に描かれているのは、実際にありそうな未来の姿のひとつである。
短い作品ではあるが、相応の知識量がなければ書けないものだと思う。
しかも、それらの知識をうまい具合に物語に落とし込む手腕が優れている。

人によってはホラーだと感じるかもしれない。
なにしろ、人間たちは機械の身体を欲しているが、実は……、というオチがつく。中にはぞっとする人もいるだろう。

だが、主人公がヒロインを好いているせいか、物語の終わりはとても優しい(という印象を受ける)。

人は機械を愛せるのか。
それもまた、興味深い問題のひとつである。