初詣へ②

「悠木、お腹空いたの?」

「うん」

「じゃ、屋台でなんか買って食べよ!」

「うん」

「でさぁ、聞いてよ悠木。藤沢ったら今日ね、四条のこと抱きしめて寝てたんだよ!」

「・・・・え」

「あの2人、なんか怪しくない?!」

「・・・・怪しい?」

「あたしだってまだ、あんな風に抱きしめられたこと、無いのにっ!」

「・・・・うん」


藤沢と俺の後ろを歩く夏川と悠木が、そんな話をしているのが聞こえる。


つーか、藤沢、なんで夏川と並んで歩かないんだよ?

なんでソッコーで俺の隣、陣取ってるワケ?!

もしかして、朝のアレのせいで、ケンカでもしたのか?!


「おい、藤沢」


後ろには聞こえないくらいの小さい声で呼びかけながら、俺は藤沢の脇腹を小突いた。


「なんだよ、四条」

「夏川と歩けよ」

「なんで?」

「なんで?じゃねーだろ」

「・・・・なんで?俺、四条と歩きたいんだけど」


キョトンとした顔で、藤沢がピュア丸出しな目を俺に向ける。


「・・・・お前、ほんとに俺の事、好きな」

「ああ」

「夏川よりもか?」

「何言ってんだ、そんなの」

「だよなぁ」

「較べられるわけないだろ」

「・・・・はぁ?」


藤沢よ。

俺もお前の事好きだけど・・・・ごめん、お前ほどじゃねぇわ、多分。

つーか、それ以上はやめとけ。

また夏川に、変な誤解されるぞ?

ピュアも大概にしとけ。


隣で爽やかな笑顔を浮かべる藤沢を見ながら、心の中でそんなことを思っていると。


「・・・・チッ、四条め・・・・」


何やら不穏な夏川の言葉が耳に届いた。

恐る恐る、後ろを振り返ると。


夏川が、ジトッとした目で俺を見ていて。

おまけに、悠木までもが、なにやらムスッとした顔で、藤沢を見ている。


えっ?

なにこれ、なにこの構図っ?!

なにがどうなってこうなってんだっ?!

あーもうっ、めんどくせーっ!!


「俺、先行って並んでくるわ」


俺は1人、その場から逃げ出すために、神社に向かって走り出した。


”あっ、なんだよ四条っ!”

”待ちなさいっ、四条っ!”

”・・・・しじょー!”


後ろからは、俺を追いかけて来る足音と、声が聞こえて来る。


うるさい、追いかけて来るな。

元日早々、何やってんだよ。

お前ら全員、頭冷やしやがれ。

つーか、藤沢っ!

きっと全部お前のせいだっ!

何とかしやがれっ、この状況!

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