悠木の失踪④
「「えっ?!」」
俺の家に着いた藤沢と俺は、見事にシンクロして、同時に声を上げた。
そりゃそうだ。
あんなに捜し歩いていた悠木が-ルイが、俺んちの玄関のドアにもたれかかって座り込んでいたのだから。
「瑠偉っ!」
俺より早く動いたのは、藤沢だった。
悠木の側に駆け寄り、肩を揺さぶり声を掛ける。
だが、悠木は目を閉じたまま、ピクリとも動かない。
「・・・・悠木?」
続いて、俺も恐る恐る悠木に近づき、声を掛けた。
目を閉じたままピクリとも動かないが、胸の上下の速度から察するに、これは爆睡パターンだろうと思った。
外の昼寝ポイントで、芝生の上に寝転がって爆睡している時の、悠木の呼吸と同じテンポだったから。
「四条っ、どうしよう?!瑠偉がっ」
「大丈夫。多分、爆睡してるだけだ」
「え?」
「とりあえず、中、運ぼう」
「お、おう」
悠木の体を藤沢に一旦預け、俺は玄関の鍵を開けた。
藤沢がお姫様抱っこで、悠木を和室に運び込む。
じいちゃんとばあちゃんの仏壇がある、和室に。
「藤沢。悪いけど、真菜さんに連絡してくれるか?悠木見つけたから俺んち来てくれって」
「えっ?!真菜さん、ここも知ってんのか?」
「あっ。・・・・うん、まぁ」
曖昧に濁し、藤沢が真菜さんに連絡を入れている間に、俺は部屋から悠木の枕を持ってきた。
そして、和室の押し入れにあった来客用の布団を一組敷き、悠木の枕をそっと、その上に乗せる。
「真菜さん、すぐ来るって」
「そっか。分かった」
再び藤沢がお姫様抱っこで悠木を布団の上に寝かせたのだが、その間一度も、悠木は目を覚まさなかった。
「ルイ」
ほどなくしてやってきた真菜さんの呼びかけにも、悠木が目を覚ますことはなかった。
ただ、規則正しい寝息を立て、眠り続けている。
もしかして、悠木はずっと、眠れていなかったんじゃないだろうか。
俺を昼寝に誘いに来なくなった、あの日から。
俺んちに来なくなった、あの日から。
だから、寝不足がたたって、こんなことになったんじゃないだろうか。
藤沢は、真菜さんと入れ替わるようにして、帰って行った。
とりあえず悠木が見つかったことに、安心して。
そして、真菜さんには、念のため、うちに泊まってもらう事にした。
もし、悠木になにかあった場合、俺には何にもできないから。
だって、悠木は、女だ。
着替えさせてやることすら、今の俺にはできない。
きっと悠木だって、俺にそんなことは、して欲しくないだろう。
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