―82― 周回と邂逅
アレアトリオダンジョンに入って早々、モンスターと遭遇する。
「グルル……っ」
◇◇◇◇◇◇
〈
討伐推奨レベル:53
巨大な爪を持った狼。俊敏な動きで巨大な爪を振り回す。
◇◇◇◇◇◇
以前なら、一人では倒すのが厳しかったため、モンスター同士を仲間割れするよう誘導して、それぞれが争っているうちに倒すなんて戦法を使っていたが、その頃に比べたら、それなりにレベルが上がっているはず。
力試しのつもりで、一人で戦ってみようか。
「〈
右手を突き出し、水の塊を発射させる。もちろん、当てたところでダメージを与えられないのは百も承知。
とはいえ、警戒はするはずだ。
「――ッ!」
読みどおり水の塊から逃れようと、
この隙さえ作れたら、僕にとって魔法を使った意義がある。
一瞬でモンスターに接敵をし、短剣を突き刺すそぶりをする。
「〈必絶ノ剣〉」
スキルを使って、確実に仕留めることにする。
◇◇◇◇◇◇
レベルが上がりました。
◇◇◇◇◇◇
と、メッセージが表示された。
モンスターを倒したってことだろう。
死骸となった
MPを消費しすぎたので、飲むことにしたのだ。
飲んでもすぐにMPを回復できるわけではないが、次にモンスターと遭遇するまでには回復できているはず。
その後も順調にモンスターを倒しながら、ダンジョンを進んでいく。
ただ、予想通りではあるが水魔法を使う機会がほぼなかったので、レベルアップのさい、知性の数値はほとんど上がらなかった。
そして、いつものごとくボスエリアで壁抜けをして報酬エリアにたどり着く。
報酬エリアといえば、初回クリア報酬だ。
といっても、あまり期待していなかった。
さすがに2連続〈魔導書〉が手に入るなんて、ありえないからだ。
「あっ」
宝箱の中身を見て、僕は唖然としていた。
「これ〈魔導書〉だ」
どうやら僕は再び、〈魔導書〉を手に入れたようだった。
◆
せっかく〈魔導書〉を手に入れたことだし、早速使うことにする。
確かに、魔力を通して――
「うっ」
魔力を〈魔導書〉に流した途端、光を放ち始めたので、思わず目をつぶってしまう。
そして、気がついたときには光が止んでいた。
◇◇◇◇◇◇
〈土魔法・初級〉を習得しました。
◇◇◇◇◇◇
「今度は土魔法か」
できれば火魔法を覚えたかったけど、仕方がない。
早速、使ってみようと思い手を伸ばし詠唱をする。
「〈
すると、手から小石が発射される。
うん、まず小石がすごく小さい。小石と呼ぶより砂と呼ぶべきなんじゃないかというぐらい小さかった。
これなら手で石を投げたほうがまだマシだ。
「これじぁ、当分使えそうにないな……」
軽く落ち込みながら、転移陣を使ってダンジョンの外に出る。
それからモンスターの素材を換金してもらい、本屋に立ち寄ることを思いつく。
名称未定になにか本を買ってあげよう。
「なんかいつもより騒がしい?」
ふと、人通りの多い道を歩きながらそんなことを思う。
いつも賑やかな通りではあるが、普段とはなにか様子が違う。皆が切羽詰まった様子で話し合っているような……。
なにか事件でもあったのかな? と不安になるが、早く用を済ませようと本屋に入る。
「これ、いいかも」
名称未定になんの本がいいか物色していたら、気になる本を見つけた。
タイトルは『魔法の教本』と書かれている。試しに中身を読んで見ると、魔法に関して様々なことが書かれていた。
オーロイアさんは本来なら何年もかけて魔法を覚えるものといっていたし、こういう本を読んで学ぶのが普通なんだろう。
悪くない機会だし、買って読んでみるのもいいかもしれない。
そう決めた僕は『魔法の教本』と名称未定が読むための本をもう一つ買って、本屋を出る。
「よぉ、探したぜぇ」
「――ッ!!」
歩いてる真後ろから話しかけられる。
驚いた僕は胸にざわつきを覚えながら後ろをふりむいた。
「なんで、ベンノのせがれがまだ生きてやがるんだぁ?」
そいつは僕の知っている顔だった。
この男はこの町を出ていったはずなのに、なんでここにいるんだ? そう思いながら、僕は彼の名前を呼ぶ。
「ワルデマールさん」
と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます