―66― パーティーとのダンジョン攻略
アルセーナくん含むパーティーに、僕は一時的に加入することになった。
「あくまでも、このダンジョンを抜けるまで、てめぇをパーティーに加えてやるだけだからな。そこんとこ勘違いするなよ」
と、念を押すようにリーダーが僕に口酸っぱく言う。
なんでこうなってしまったんだろう? と僕は後悔しながら、パーティーの後ろからついていった。
ちなみに、せめて荷物持ちとしてパーティーに貢献しろってことで、大きな荷物を持たされている。
なんだか、ギジェルモのパーティーにいた頃を思い出す。あのときも、僕は荷物持ちとしてパーティーの後ろにいた。
早く家に帰りたい。
ソロで行動すれば、すぐにこのダンジョンを抜けられるのに。
家では、名称未定がご飯を作って待っていることだろう。あれから、名称未定は毎日、夕飯を作るようになった。
腕も日に日に向上しているようで、おいしい料理を作れるようになっている。たまに、失敗してまずいときもあるけど。
ともかく、最近の僕は名称未定の作る夕飯が楽しみで仕方がなかった。
名称未定との生活も結構馴染んできているんだよなぁ。
最初の頃は名称未定は僕に対し、つっけんどんな態度だったが、ここ最近口が悪いのは直ってないけど、会話をしてくれるようになったし。
当初はなにか事件を起こさないか心配だったけど、それも料理や読書にハマってくれたおかげなのか、大人しくしてくれている。
まぁ、だからって名称未定に心を開きすぎるのも問題なんだけど。いつかはエレレートに体を返してもらう必要がある。
そのことに関して、僕と名称未定は相容れることはないんだから。
「おい、モンスターが現れたぞ!」
ふと、見ると前方に
僕を除いた冒険者たちは陣形を組み、相対する。
アルセーナくん含むパーティーは僕を除いて四人いる。
アルセーナくんは大きな盾を持って、タンクの役割を担っているからか、前に進み出ていた。
リーダーとパーティー唯一の女の冒険者はどちらも剣士で、両側からモンスターを挟み込むように突撃しようとしていた。
もう一人、弓使いがいて、後方から狙撃しようと構えている。
ちなみに、僕はさらにその後ろでなにをするでもなく突っ立っていた。
邪魔をするな、と言われていたし、ここはなにもしないのが最善だろう。
そして、4人は協力して
「みんな、大きな怪我はしていないよな?」
戦闘終了後、リーダーは皆に確認するようにそう言う。
「アルセーナ、お前は回復薬を飲んでおけ」
「そんな、悪いっすよ」
「タンクは一番命かける必要のあるポジションだからな。飲めるときに飲んでおくもんだぞ」
「あ、ありがとうごさいます」
と、リーダーがアルセーナくんに回復薬を渡していた。回復薬は貴重だから、アルセーナくんが渋るのも無理はないが、結局リーダーに説得されて回復薬を呑むことにしたようだ。
「おい、アンリ! お前は素材に解体して袋に詰めておけ!」
「は、はい」
返事をして、せっせと
どうやらリーダーが当たりが強いのは僕にだけのようだ。
こんな調子でパーティーは次々とダンジョンの奥へと進んでいった。
「ボスの部屋の手前まで来てしまったわね」
女剣士の言う通り、僕らはボスエリアの扉がある部屋までたどり着いていた。僕としては何度もこの部屋に来たので、特に感慨深いってことはないが。
「リーダー、どうします? 引き返しますか」
「引き返すにしても、それだけの体力残ってないだろ」
ボスを倒して転移陣で外にでるか、道中に出てくるモンスターを倒しながら来た道を引き返すか、どちらを選択するかはダンジョン攻略において判断が難しいところだ。
「ここのボスなんだっけ?」
「確か、
「どんなやつだっけ?」
「えーと、覚えてないな……」
「ギルドで確認にしたとき、そんな強いって印象はなかったけどね」
「確か、ここの初回クリア報酬大したことないから、攻略する旨味もあんまないんだよな」
「でも、
「あ、あの……っ」
「てめぇは無能はなんだから、黙ってろ! アンリ!」
「ご、ごめんなさいっ!」
口を開いたら、リーダーに怒鳴られた。
実際、彼らは
それさえできれば、問題はないとは思うけど。
「おい、アンリ」
リーダーに呼び出しをくらう。
どうやらパーティーでの話し合いが終わったようだ。
「俺たちはこれからボスエリアに入ることに決めた。んで、お前はどうする? こっから一人で引き返してもいいぞ」
それなら、一人で引き返そうかな。
他の人とボスエリアを入ってクリアなんてしたら、初回クリア報酬をもう一度回収することができなくなってしまうかもだし。
「リーダーお願いですから、アンリもボスエリアに入れてやってください!」
と、会話に割り込んできたのはアルセーナくんだった。
「だが、こいつを守るなんてできないぞ」
「けど、こいつが一人で引き返すよりは中に入ったほうが助かる可能性が高いので」
「もう勝手にしろ」
諦めたようにリーダーがそう口にする。
「アンリ、俺が守ってやるから心配しなくていいからな」
小声でアルセーナくんが耳打ちするようにそういった。
「あ、ありがとう……」
内心、ありがたいとは思ってないけど、一応お礼を言っておく。
幸いにも〈結晶のかけら〉はあと一つ回収すれば、終わるはずだし土下座でもして譲ってもらえばいいか……。
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