―29― 初めての!

「新しいスキルを試すなら、やっばりここしかないでしょ」


 僕が向かったのは初心者用のダンジョンとして知られているファッシルダンジョンだ。

 コボルトが多く生息しており、初回クリア報酬が〈旅立ちの剣〉で、僕が初めて〈回避〉を使って、壁抜けをしたダンジョンでもある。

 今回試したいのは、新しいスキルでモンスターが倒せるようになったかどうかだ。

 僕は今まで攻撃力のステータスが低すぎるのと、攻撃用のスキルを持っていないせいで弱いモンスターすら倒すことができなかった。

 だが、今回念願の攻撃が強化されるスキルを手に入れることができたわけだ。

 そんなわけで、僕がモンスターを倒せるようになったか一番弱いとされているコボルト相手に試してみようと思った次第だ。


 ◇◇◇◇◇◇


〈物理攻撃クリティカル率上昇・小〉

 物理攻撃をしたさい、まれにクリティカルヒットが発生する。


 ◇◇◇◇◇◇


 僕はステータス画面で〈物理攻撃クリティカル率上昇・小〉の項目を確認していた。

〈物理攻撃クリティカル率上昇・小〉は常時発動型のスキルだ。なにもせずとも常に発動しているため、MPを気にする必要はない。


「あとは、クリティカルヒットがどれだけモンスターにダメージを与えられるかだよね……」


 今までモンスターに傷一つつけられなかった僕のことだ。クリティカルヒットさえもモンスターにダメージを与えられないなんてこともありうる。

 と、悪い想像をしていたら身震いがしてきた。

 今から最悪なこと考えても仕方がない。


「グルル……ッ」


 気がつけば、現れたコボルトが僕に威嚇していた。


「よしっ、いつでもかかってこい」


 僕は気合いをいれつつ、そう口にする。

 すると、コボルトが口を開けて飛びかかってくる。

 遅い……っ!?

 それが真っ先に思った感想だった。

 コボルトってこんなに遅いモンスターだっけ? いや、僕が速くなったのか。

 思えば、以前コボルトと戦ったときに比べたら、敏捷のステータスがめちゃくちゃ上がっているはずだ。

 だから、こんなにも遅く感じるわけだ。


「横ががら空きだぞ!」


 攻撃をかわしつつ、ナイフでコボルトの首元を斬る。

 だが、カキンッ! という音で刃が弾かれた。

 まぁ、いきなりクリティカルが入るわけないよな。

 再び、コボルトが僕に向かって攻撃を繰り出す。それを回避して、僕はナイフを前に突き出す。

 僕がやるべきことはクリティカルが入るまで攻撃し続けることだ。敏捷があがったおかげで、刃物を振り回すスピードもあがっているはず。

 だから一瞬のうちに、何十回もナイフで斬りつけることも可能なはずだ。

 目にも止まらぬスピードで腕を振り回し、何度も何度もナイフでコボルトを斬りつける。

 そして、15回目の攻撃にて手応えのようなものを感じた。

 ザスッ、と刃がコボルトの首を貫き、そのまま一直線に斬りつけたのだ。


「た、倒した……?」


 血を出しながら倒れるコボルトを見て、そう言葉を漏らす。

 そして、コボルトが動かなくなったのを見て初めてモンスターを倒したんだという実感がわいてきた。


 ◇◇◇◇◇◇


 レベルが上がりました。


 ◇◇◇◇◇◇


 ピコン、と小さな画面が目の前に表示される。

 そうか、モンスターを倒したからレベルが上がったんだ。

 僕は慌ててステータス画面を表示した。


 ◇◇◇◇◇◇


 アンリ・クリート 13歳 男 レベル:1→2

 MP:90→91(UP!)

 攻撃力:10→13(UP!)

 防御力:50→52(UP!)

 知 性:60→61(UP!)

 抵抗力:60→61(UP!)

 敏 捷:1150→1153(UP!)

 スキル:〈回避〉〈物理攻撃クリティカル率上昇・小〉


 ◇◇◇◇◇◇


「ほ、本当にレベルが上がっている……ッ!」


 色んな冒険者に『永遠のレベル1』と呼ばれてバカにされていたことを思い出す。これで、やっと汚名返上できるんだ。

 それに念願だった攻撃力もちゃんとあがっている!

 僕にとって今日は初めてモンスターを倒した日であり、初めてレベルがあがった日でもあるわけで、これは記念すべき日だ。


「やったー!」


 僕はその場で、両手を高く掲げては飽きるまではしゃいでいた。


―――――――――――――


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