同居のはじまり
森田さんのマンションは本当にうちの近くだった。
しかし、うちよりきっと家賃はお高い。
オートロックでラグジュアリーなエントランス
そこで私がついてくるのを不安げに待つ美青年、いや三十路だっけ?
美青年に変わりはない。
森田さんは最上階だった。
部屋は2LDK
私わかりましたって言ってきたけど、え。マジで森田さんと同居?!
今更ながらビックリしてる 自分に。
セラピストってなんなんだ。
「残りは業者が、運びます」
「はい。」
そっか、森田さんは毎度はどもらない。緊張した時、極端に何言ってるか分からない。
普段からあまり分からないけど......。
「あの、ここで一緒に生活するんですよね?」
「あ はい そ そうなります....イヤ....ですか?」
うわぁ 不安げな目 嫌じゃないよ うん 大丈夫。
『そうだ。俺と住むのが嫌か?』
「嫌じゃないです!嬉しいです」
あ 私脳内補正して、なに言ったんだ.....もう どうにでもなれ。
「よかった....」
「あの、食事は?掃除は?私やりますか?または当番制にしますか?!」
「あ、えっと.....じゃ極力 僕します」
「いやいや そんな負担になります。森田さん、会社で最後倒れたのまで偽りじゃないですよね?あの、青白さは.....」
「あぁ あれは本当に.....倒れました.....ちょっと任務がハードで」
「じゃ 極力私がします。いや、協力してできる方がしましょ。ねっ。」
あ なんか照れてるのか。森田さんが頭をわしゃわしゃ掻いてる....。
なんというか、仕草も猫みたいな人。
森田さんは、細いけど体はなかなかマッチョ?顔が小さいから華奢に見える。目はほんとに絵に描いたみたいな美しさ。これが目です!って。
色白で、髪....あっオシャレだと思ってたハイライトみたいなのは、白髪染め?!
いや30でそんなにないかな。
若くは見える。
鼻も口も端正な美青年。女装してもいけそうな。
あ!!?セラピストってことは、何かしなきゃ駄目?
カウンセリング?何も知識ないんだけど、てかナニコレ。どうやって質問しようか。
きっとまた、どもる。
仕方ない......。
「あの、私の仕事はセラピストですよね?」
「あ はい」
「具体的に何を?」
「ああ 具体.....癒やし、セロトニン」
?
「僕の精神状態が、あが、落ち着くようになんでもしてください....そ その、真琴さんなら、居てくれるだけで...だ大丈夫かと」
あぁ何言ってるか分からない....。
『君が居るだけで癒やしだ』ってこと?
「簡単に言うと、抱きしめたり、話聞いたり?私、カウンセラーでも何でもないのに。あ、彼女みたいにイチヤイチャ?え?!」
あ、だめだ私まで何言ってるかわからない―――。
「イ イチヤイチャ?!って?」
おいおいおいっ。イチヤイチャまで説明しろって!?
「あぁぁ イチヤイチャは してもらえるなら、僕は.....たぶん欲します、あ でもそんな事はしなくて.....」
?!
『あぁそりゃイチヤイチャしてくれんなら嬉しい』
「承知いたしました」
森田さんは、私の返答にまた停止している。
ほんとに、恋愛免疫なし?!
―――ピンポーン
「はい どうぞ」
「失礼しまーす」
現れたのは普通のサラリーマンみたいな男性。
すぐにリビングの椅子には座らず床に座り込み、タブレットを出した。
「セラピスト認定 おめでとうございます。
本日より月末分までは日割りでお支払いいたします。
森田 隆史の精神状態が、正常値に戻りますまで何卒宜しくお願いいたします。
手段の指定、制限はございません。
セロトニンが増産されるよう頑張ってください。
任務の詮索は禁止行為となります。
セラピストである事実の公表も禁止行為となります。
で、本日の数値は....」
ピッピッ
「367」
「ではこれにて」
去った......
数値?あんな、体温計みたいなピッピで分かる?!
367って36.7度の体温計じゃないの??
「ああの、森田さん」
「はい」
「数値は、いくつになれば正常値ですか?」
「理想は0です。正常値は30あたりまで」
「そうですか」
さっぱり分かりません。もしかしたら壮大なドッキリとか嘘かも。いやワザワザ私をドッキリさせる理由は無いか。あんなピッピッする紳士呼んでまで。
兎にも角にも森田さんは悪には見えない。
不安に取り憑かれた迷える白い猫みたい。
あぁ私の荷物....ほぼガラクタが運び込まれる。
「真琴さん、家具類は一時的に貸倉庫にあります。」
「あ 分かりました」
じゃ、なおさらそれは、ガラクタだけだ......わざわざ引っ越し屋はダンボール2個ほどを運び入れた。
「買い物行ってきます。晩御飯」
「私も行きます」
「え」
「あ。駄目ですか」
「いえ......」
ぎこちない私達は、外へ。
報酬とか言ってたなぁ、これは仕事?じゃ本日からなら、なんかしないと。まずはセロトニン?調べる?ホルモンだよね?たしか。
いや、今すぐ出来る事は.....。
何も言わずただ歩く森田さんを見上げるとやっぱりイケメンでしょ。
森田さんのしなやかで長い指にそっと手を絡めた。そう、手をつないだ。
森田さんは、ピクンとしたがそのまま前を向いてる。
手なんて山ほど繋いできたのに、何十本も。指の数ねっ、腕の数ではない。
どーして、こんなにドキドキしてんのよ 私。
「な 何食べたいですか?」
「うーん、軽めがいいですね」
昨日の恐怖体験もあったし私はちょっと心強い。森田さんがそばにいて。
「いただきます」
「いただきます」
「あの、ありがとうございます。こんなお願いを、その受け入れてくれて。」
「いえ。訳はわからないので、至らない事があると思いますが。自分でつないでおいて、さっきはちょっとときめいちゃいましたっ」
ゴホッン ゴホッ ゴホッッ
「大丈夫ですか?!森田さん…」
「あ、ぁ はい。大丈夫です」
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