第171話 不吉な予感……

 山田と真奈美は、さっそく片岡に、鈴木部長も経営会議の結果に従うことを約束したと報告した。


「そうか。それはよかった。ありがとうございます。では、経営会議については私に任せていただきましょう」


 嬉しそうな片岡を見て、真奈美はほっとした。


「では、明日はよろしくお願いいたします」

「うむ。あ、あと……」


 片岡は最後に付け加えた。


「ないとはおもうけど、万が一、DDや契約交渉の内容説明を求められたらMA推進部でお願いできますか」


 それを聞いて山田は答えた。


「わかりました。その時はお呼びいただければ説明しに伺うようにします」


 電話会議を終えると、山田は真奈美に向かっていった。


「普段は鈴木部長が説明して、ぼくが質問に答えるということが多いんだけど、今回は鈴木部長は絶対に説明しないと思うから、酒井さん説明よろしくね」

「ええ!?ちょ、ちょっと待ってください。経営会議ですよ?荷が重すぎますよ」

「うん、大丈夫。大丈夫。おそらく我々が呼ばれるようなことはないと思うから」


 山田は明るい声で自分の席に戻っていった。

 真奈美は、不吉な予感を感じ、万が一自分が説明することになった場合の準備を始めた。


 翌日午前10時。経営会議が始まった。


 もうそろそろ片岡本部長の審議が開始される時間だ。

 真奈美は気もそぞろだった。


 すると、小巻がふらっと顔を見せにきた。


「真奈美。そわそわしすぎ」


 くすくす笑っている。


「もう、仕方ないでしょ。もう何にも手につかないわよ。とにかく呼び出されませんように」

「安心しなって。呼び出されても真奈美なら大丈夫。たとえ今日が『13日の金曜日』だとしても、うまくいくわよ」


 真奈美は時計を見る。たしかに……13日。金曜日だ……


「ちょっと、縁起の悪いこと言わないでよ……」

「ははは、気付いてなかったんだ。まあまあ、気にしないで」


(ほんとにもう……)


 しばらくすると、山田の電話が鳴った。


「はい……はい……わかりました。伺います」


 真奈美の表情が固まり、額に汗が噴き出した。


(……小巻の冗談が現実になった……)

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