第164話 具体性
鈴木は相変わらずのやる気がなさそうな表情だったが、真奈美の説明を最後まで聞き、真奈美の説明が終わると初めて口を開いた。
「DDの結果からすると、やっぱりこの会社単独で90億円の価値なんて見出せないということだね?」
「はい、既存事業は盤石のようですが、将来の成長にあたっては希望的観測が多いようです。ですが鈴木部長……」
真奈美の反論を制して鈴木はつづけた。
「シナジーを出せるといいたいんだろ。わかっているよ。でも、今の説明から具体的な妥当性は見出せるのか?」
真奈美は痛いところを突かれ苦しいながらに、回答を続けた。
「はい、協業策は4つ。これによって事業本部業績を底上げできると考えております」
「どう底上げになるの?」
「まずは、協業によるコストダウンの効果、それと新規技術による販売拡大を考えています」
「コストはわからんでもない」
鈴木の目は節穴ではない。
「販売拡大の具体性が見いだせない。ちがうか?」
山田も加勢する。
「鈴木部長、事業本部では営業体制のシフト計画も作り始めています。次のフラッグシップモデルとして採用されれば……」
「わからんでもない。けど、何度も言うけどこれはトップダウン案件ではない。たらればで経営幹部は納得しないぞ。下手な説明で炎上したらMA推進部の評価にも関わる」
山田は、真奈美に渋い視線を送った。
今日はこれ以上は無理、出直しのサインだった。
「わかりました。もう少し練り直してまいります」
部長室からオフィスまでの数mだけだったが、非常に長く感じる真奈美だった。
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