第100話

     Remake


「何で、オレに女の子を接近させたの?」

 今日は七海が海外にいる両親の下へもどる日。そこで空港に見送りにきていた。聖はもうお別れは済んだ、といって、今は二人きりだ。

「聖ちゃんに、興味をもたせないため……。兄妹で関係させないために、他の子に目を向かせようとしたのよ」

 真の意味で、あのサイトを管理していたのは、七海なのかもしれない。

「オレたちは、またやり直しの人生を歩むのかな?」

「ううん。私があの事故に遭わなかった以上、もうやり直しの力は働かないと思う。死んだ後、私の魂はずっとあり続けるの。そしてやり直しをさせる人の死をみとどけて、消滅していく……。私の魂が、ここにある以上はやり直しもさせられないと思うわ」

 七海はそういって、胸の中心に手を置く。あの頃より確実に高く、美しくなっているその胸は、おおらかに何でも包んでくれそうだ。でもそうなると、半グレの連中にボコボコにされたとき、オレを諫めてくれたのは誰だろう……? もしかして、前の人生で亡くなった七海が、ずっと見守ってくれているのかもしれない。今はそう思うことにした。

「私はいずれ、日本にもどってくる。そうしたら……約束したよね?」

 結婚……。七海とは、そういう約束をした。恋人……、処女……、色々と他の子とは約束してきたけれど、結婚の約束は七海とだけだ。しかもそれが、最初に女の子とむすんだ約束だったなんて、オレをプレイボーイにしたのは七海だったのでは? とすら感じる。

 しかも、サイトをつくって悩める乙女たちをオレに宛がい、関係させたのも七海だとすれば、七海は男をコントロールするタイプ……かもしれない。結婚をしても尻に敷かれるのは確実そうだ。

「私はもどってくるから……。郁君、私を忘れないでね」

「忘れないよ。七海は、オレの初恋なんだから」

「ふふ……。その初恋の人特典をつかわなくても、郁君のこと、絶対にふり向かせてみせるから」

 七海はそういって、オレの首に手を回してキスをしてきた。あのころの情熱をぶつけ合うようなそれから、甘くとろけて互いが雑じり合うような、ちょっと大人のそれになったことが、時間経過を感じさせた。

 彼女は一度言い出すとやり通す、芯の強さをもった子だ。だから逆境の中、ずっとオレを待ち続けることができた。

 そして、時の強制力を意識させようと、無理やりオレと関係してきた……と言っていたけれど、その効果はどうやら、思い出のキミとしての立場を確立し、オレの中で確固たるものとなって、淡い記憶を蘇らせる方に、より強く効果を発揮しているようだった……。


 あれから、オレはほとんど前と変わりなく過ごしている。伊丹の家に行くと、今も悩みを抱えて相談に来た少女たちがいて、カウンセリングや、必要ならばエッチをしている。

 伊丹は「私、女になりました」と、少しうれしそうにする。オレが彼女の中にだしてしまったことで、関係が一歩すすんだということのようだ。

「いいなぁ~」と、志倉はいうけれど、その意味が分かっているのだろうか?

 野崎 奏美たちは高校生になっても、未だに自由奔放にセックスを謳歌している。彼女たちの高校は非処女率が高い……などと自慢げにいうぐらいだし、彼氏がいてもエッチが下手なら浮気していい、というほどなのだから、その感覚が変わることはないだろう。

 羽沢 葵はバレエを引退し、バレーボールを始めた。すらりとして背が高く、元々誘われていたのだそうだ。熱血な部活で、セックスする暇がない、と嘆いているけれど、彼女が望んでいた女性らしい体には、年齢とともに自然と近づいてきた。今は快楽で求めてくることが多く、それがスポーツで昇華できれば御の字だ。いつまで我慢できるかは分からないけれど……。

 小早川 知彩と未来の姉妹は、半藤のラーメン屋を手伝いながら、今でも暮らしている。知彩は給仕係もしているけれど、未来はいるだけでお客さんが集まる、としてマスコット的立ち位置だ。そろそろ、千夏さんの予定日も近づき、半グレでぶいぶい言わせていた半藤の方がおろおろして、知彩の方が尻を叩くぐらいだ。何歳であっても、女性は強し……。

 高城 楓未とは映画のクランクアップと同時によびだされ、兵頭 小糸とともにエッチをしてきた。小糸も姉のツテで、読モをはじめたそうだけれど、中々仕事をとるのは大変らしい。二人とも、溜まりまくったストレスをエッチで解消しようとするので、嫌でも激しくなる。もっとも、姉妹で抜け駆けなし、を合言葉にするぐらい仲が良いので、二人なら何とかなるだろう。


 幣原 真清とも会えばエッチをする関係がつづく。勉強をするとストレスが溜まり、それをエッチで解消する。エッチについても求道者のようで、新しいプレイを勉強、研究している。この前は、家にとりつけてもらった、というハンモックで試したいと言ってきたときは、かなり大変だった。二人とも、蜘蛛の巣にかかった虫みたいになってしまった……。

 四条 真杜は神社の巫女としての仕事が忙しく、中々会う機会もないけれど、逆に会えばエッチをしている。コスプレ好きではないけれど、赤い長袴を汚さないように脱がせ、挿入するのは中々に刺激的だ。でも、そうやって定期的に湧き上がってくる情動を抜いてあげないと、暴発する恐れもあった。今は中学生という暴走しやすい時期だけに、きちんと付き合わないといけない。

 それに、何となく従妹である梅木 美潮と、雰囲気が似てきた気もする。どこか抜けているところがあって、でも自分の病気に立ち向かい、最後の思い出としてエッチをした美潮……。彼女にしてあげられなかった分、四条には幸せになって欲しいと考えていた。

 上八尾 リアとも変わらず、仲良くしている。一緒にいると、オレの肩に頭を乗せてくることが多くなった。それは、愈々自分より身長が高くなってくれる……それを確認する行動に思えた。

 そしてそのとき、恋人宣言をするのだろうか? 今や中高生のカリスマとして、大きな影響力をもつモデルであり、またオレの周りの女の子たちにも、少なからぬ衝撃を与えるだろう。まだまだ、リアとの関係も大変なことがつづきそうだ。でも、オレをおっぱい星人にした、その大きな胸の破壊力は健在であり、今でもその攻撃にオレもめろめろだ。


 妹の聖とも、関係はつづけていた。ただ、従わされる呪縛からは解かれ、オレは彼女にださなくなった。それは、事情を知ったことも大きいだろう。ただ長い間、オレのことばかりを見てきて、急にそれをするな、とも言えない。

 だから、他の女の子と同じだ。彼女が少しでもよくなるよう、オレが手伝ってあげている。そのとき、エッチで慰めることが必要なら、オレも厭うことはない。

 七海から、もうやり直しは起こらない……と言われた。だからこそ、この人生をよりよいものにしないと、ここまでの苦労が報われない。そのために、これからもオレは人助けをつづけていくつもりだ。

 多くの苦痛に耐え、苦難を乗り越えて、やっとつかんだこの人生。そう、オレたちはRemake Liveをし、その中でMake Loveを重ねていくのだから。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Re:メイク LΦVE  巨豆腐心 @kyodoufsin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ