第32話

     Boy's Body


 オレはあれからも、人助けをつづけていた。

 ただ、ここ最近は家出する子に声をかけたり、イジメの芽を摘んだりすることが多くて、その場限りで終わることが多い。むしろ、大変な目に遭ったこともあり、慎重になっていた。

 そして、ちょっとした変化もあった。

 放課後になると、時おり古い公団住宅の三階に出向く。呼び鈴を鳴らすと、中からでてきたのは、伊丹 紗文である。憶えているだろうか? 妹の同級生で、妹からイジメを受けそうになっていた少女だ。

 伊丹に対するイジメは、同級生の男の子たちから陰部を攻撃される、というものであり、それを救ったことで、時の強制力により彼女は陰部に熱さを感じるようになった。小学二年生、それを解消する策として、自分で慰める方法を教えた。


 伊丹はかわいい子だけれど、卑屈さと同時に自己主張が強いところがあり、それが相手をイラっとさせる。つまりイジメられやすいタイプだ。

 オレは当時、梅木を亡くして間もなかったこともあり、やさぐれていた。

「指じゃダメなんです! 指じゃなくて……、その……ちゃんとして下さい!」

 伊丹はそう主張する。好きでもない相手と、そんなことをするべきでない……との説得は、聞き入れられなかった。

 オレもこの、学校の駐車場にある物置小屋で、指で彼女をイカせる……という行為に辟易していた。スカートをたくし上げ、陰部に挿入していた指を引き抜くと、そのまま何の説明もせず、まだ毛も生えていない、オレの指しか通ったことのないそこに、荒々しくねじ込んだ。

 若干、下つきでもあるので、オレに乗せるような形になった。彼女が初めてで、しかも立ち……ということさえ失念していた。かなり痛かったはずで、歯を食いしばっているけれど、悲鳴は上げなかった。

「これがセックスだよ」

 そう言いながら、オレは激しく突き上げる。彼女は小さな体を上下させつつ、それでも何も言わなかった。オレはイかなかったし、出さなかったけれど、彼女の締め付けてくる力で、彼女がイッたことを確認し、そこで止めた。そして彼女は小さな声でこう告げてきた。「あ……ありがとうございます」


 そんな乱暴なことをしたバチが当たったのか? 少し面倒なことになった。彼女が周りに話してしまったらしく、『大人の体験をさせてくれるお兄さん』の存在が伝播してしまったのだ。

 直接、オレの名前が広まったわけでないけれど、彼女を通して体験したい女の子が集まってくる。

 その日も、伊丹家のリビングに伊丹を除く二人の少女がすわっていた。

「キミは三度目だね? 隣の子は初めてか……」

 二人とも、隣町にある有名なお嬢様学校の制服で、小学生である。

 ポニーテールで背も高く、大きな目が特徴的な彼女は、すぐに立ち上がって「あら? 私のことを憶えていて下さって、光栄だわ」

 はきはきとした喋り方で、よく通る澄んだ声の少女は、羽沢 葵。小学六年生である。成長したら、そのまま宝塚の男役でもやれば似合うのでは……? というほどの美形で、背も高い。

 彼女と会ったときのことは、よく憶えている。何しろ、いきなり「私はきれいになるために、ここに来ました!」と、堂々と言い放ったのだから。


 処女を捨てにきた少女に、オレはカウンセリングから始めることにしていた。それで考えを改める子もおり、半分ぐらいは何もせずに帰宅する。

「興味本位だったら止めた方がいい。今の君たちの体は、急激な変化の中にある。無理に体験することによって、どういう作用があるかも分からないのだから……」

「大丈夫です。私はまだ、初潮も迎えておりません。むしろ、ここでそれをすることにより、女性らしい体になることを望んでおります」

「女性らしいって……、十分、女性らしいと思うよ。胸の大きさなどは、人それぞれで大きくなるタイミングもあるし……」

「それではダメなのです! 私は今すぐ、綺麗になりたいのです! そのために、ここに来ました」

「確かに、性的行為をすれば女性ホルモンが分泌され、成長が促されるという話もあるけれど……」

「ええ。私を女にして下さいませ」


 羽沢は背が高いのに、それはまるで少年のような体だった。胸もほとんどなく、腰のふっくら感もない。そのとき、オレも小学六年、彼女も五年生だったが、顔のつくりや局部を見ず、背中からみたら男の子だと思っただろう。それぐらい筋肉質で、細身だけれど引き締まった体だった。

 唇をかわすも、胸をさわるも、凛とした彼女はまったく動じる様子もない。羞恥心という言葉は、ここで女性になる、きれいになる、という目的のためには何の障害にもなっていない。初潮もまだ……というだけあって、陰部にも毛が生えておらず、指を這わしていくけれど、あまり感じないように、その態度が変わらない。

 指を入れるとどう……? と思ったけれど、少しは反応してみせたものの、むしろ気が張っているようで、上を向いたまま無言だ。

 羽沢には嫌な予感しかしなかった。指でさえ、ちぎれそうなほどの強さで締め付けてくる。これは仮に入っても、腰をつかうことは難しそうだ……と。


 不感症――? これまでとて、彼女は女性らしさを増すために、努力を重ねてきたはずだ。だからこそ、ここに来た。偶々オレのことを知り、一足飛びにそうしよう、と思ったわけではないだろう。女性らしくない体に、性的な部分に対する刺激に、何の反応もない……。本人がそれを自覚したからこそ、ここにきたはずだ。

「うつ伏せになってくれ」

「どうしてですの?」

「そういうやり方もあるんだよ」

 確信があるわけではなく、うつ伏せになった羽沢のぴたりと閉じられた足の間に手を差しこむ。そこを、内腿の辺りを陰部を攻撃するのと同じやり方で、より高速に微妙な振動で刺激を加える。

「ひゃぁぁぁぁッ‼」

 これまで聞いたこともないような悲鳴を上げて、羽沢は仰け反った。

 ここが、壁が厚いモルタルでよかった……。伊丹の部屋であるけれど、隣近所には聞こえていないことを祈る。


「な、何をしたんですの?」

「内股だよ。筋肉のついていない個所を考えていったら、ここに行きついた」

 壁を背にしてすわったオレの、足の上に彼女を背中向きに跨らせた。そうやって足を開いた状態を、オレの足でキープしつつ、両手でそれぞれの足の内股を、集中的に責める。

「いやぁぁぁぁッ……! ひゃぁぁぁぁッ……! きゃぁぁぁぁッ……!」

 あらん限りの悲鳴をあげ、羽沢は身悶えし、逃げようとするので、そのたびに体を押さえつけた。このまま挿入した方がいい……。オレもそう考え、彼女が少し浮かしかけた腰に、自分のを支えながら挿入を試みる。

 案の定、きつ過ぎて中々入っていかない。そのたびに片手で彼女の体を支えながら、もう片方の手で内股に刺激を与える。彼女が悲鳴をあげ、身悶えするたびに、少しずつ入っていく。

 まるでサイズの合っていないネジを、強引に差し込んでいくようにして、また彼女の重みも利用して、何とか最終地点まで到達することができた。

 どうせ彼女の中で動くことはできそうもない。なので入れたまま、内股と同時に胸をさわり、首筋をさすり、一つずつ性感帯を憶え……否、思い出させる作業をつづけたのだった……。


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