第181話 暴発注意!?
・徹夜はしない。
・夜寝た後は朝起きるまで会わない、喋らない。
・微妙な時間帯に話さないといけなくなった時には、お互い切り替わった後か聞いて、ずれてる場合には相手が知らないことは話さない、伝えない。
暁に以下の3つの決まり事(以前は4つだったけど、4番目は僕だけ注意したらいいのようなので割愛している)を話した。
「なるほどな。確かに徹夜で遊んで、寝て起きてきた仲間と話したらどうなるかわからないよな。わかった。あとはない?」
「それと、ここには男しかいないから言うけどな、これが一番大事かもしれない」
竹下がキョロキョロして急に小声で話し出したけど、他に大事な事ってあったかな?
「夜寝るときには確実に処理して寝ること。溜めてたら大変なことになる」
処理って? 溜めるって……もしかしてあれの事?
「もし忘れて寝ちゃったら、朝からパンツの中が大変なことになっている」
「マジか!」
そ、そうかなあ。僕はそんなことないけど……
「ああ、お前も結婚しているならわかると思うけど、あちらは夜が盛んだよな」
暁もうなずいている。それはそうかもしれない。うちも……まあそうだし、織物部屋でもそういう話はよく出てくる。
「つまりだ。気持ちいい状態で寝てしまってこちらで起きるとどうなるか……わかるよな」
暁はごくりと唾を飲み込んで、『暴発』と一言つぶやいた。
「そう、下手すりゃ毎朝……なんだか樹はきょとんとした顔しているけど、ならないの?」
「え、僕!」
「樹ってあちらが女の子だからそういう心配がないのか……それともほんとに男なの? 気になるな。ちょっと調べてもいい」
暁が僕の方ににじり寄って来る……
以前エキムの性格はまじめなユーリルかなと思ったけど、違う。ただの思春期の男子だ。それも男子校のノリの!
竹下が暁にゲンコツを落とすと同時に風花から電話がかかって来た。
「いてて……」
「お、おはよう、風花。え、な、何でもないよ。……うん。わかった。…………あのね、風花が暁のことが心配だから来るって」
そうだ、暁がみんな無事だって言うから、昨日のタルブクでのことは詳しく聞いていない。風花が来たら一緒に聞いてみよう。
僕と竹下はすぐに到着した風花と一緒に、暁が話し出すのを待っている。
「朝起きたらさ、ほんとにあちらの世界だった。そして俺の意識がエキムの意識を乗っ取るのかと思ったら、エキムが俺の知識と経験を得るような感じなんだな。俺はエキムだという自覚はあったもん」
テラの自分とこちらの自分はあくまでも別人、これがわかったら暁もエキムとすぐになじむと思う。どちらの自分が本物かとか考えだすと精神に影響があるんだよね。
「それでどうしたの? 盗賊はやっつけたんだよね。忍者の技でも使ったの?」
暁は昨日忍者の末裔だと言っていた。それが本当なら使わないことは無いだろう。
「まあ、待て待て、順を追って話すから」
そう言って暁が語ってくれた話は映画さながらで、よくもまあ無傷で乗り越えてきたものだと感心したよ。
「やっぱり最初の一人目だね」
風花の言う通り、最初の一人目をうまく仕留めきれたことでその後の動きもうまくいったように思う。
「うん、あいつら俺たちを舐めていたから、監視はざるだったんだよ。でも一人目で騒がれたら残った盗賊も警戒しただろうし……そうなったら村人の命も危なかったはずだ」
一人目を声も出させずに無力化し、同じように盗賊がバラバラになっているタイミングで一人ずつ確実に仕留めていく。各個撃破とかわかっていてもうまくやるのは難しいだろう。
「暁って、ほんとに忍者の末裔なのか?」
「まあな、子供のころからそういう修行は受けてきた」
忍び寄って仕留めるとか、昔の映画で見た時はこんな人いないよって思ったけど実在したんだ。
「とういうことは遠野先生も忍者ってこと?」
「一応な、昔で言ったら頭領ってやつだ。でも、言いふらさないでくれよな。バレちゃまずいから」
そりゃそうだろう。忍者とかが普通にお隣さんでいたらみんなびっくりだよ。それに遠野先生は大学の教授で社会的な地位もある。こんな人が暗殺もお手の物とか知ったら、誰もおちおち授業で寝てられない。チョークの代わりにクナイが飛んでくるとかシャレにならないよ。
「今でも、忍者の仕事とかあんの?」
「無い無い。こんな平和な世の中じゃ役目なんてないよ」
それでも残っているって言うことは、いざというときのために技を継承しているっていうことかな。
「それじゃ、最初の一人目の時は戸惑ったんじゃない?」
忍者の仕事が無いのなら、こちらでは人を殺したことなんてなかったと思う。それがいきなり実戦しないといけないだなんて……
「うーん、確かにこちらでは人を殺すどころか傷つけることもなかったんだよな。でも、タルブクって盗賊に襲われることもあったからさ、エキムの時はもう何人もの人を手にかけたことがあったんだ。だから、そこまで気にはならなかったかな。そうしないと村のみんなや家族を守れないことはわかっていたし」
「そうか、タルブクは大変なんだな……」
「でも、これからは大丈夫だ。大豆の件もそうだけど、お前たちが目指しているものがわかるから。だから、改めてお願いする。俺も一緒に手伝わさせてくれ」
「もちろん」
「まあ、仕方がねえな」
「暁が樹とベタベタしないなら構わないよ」
「ベタベタって……なあ、樹。俺って風花に
「さあ……」
風花も何か勘違いしているんだと思うけど、暁とエキムが仲間になるのは心強い。タルブクとの情報の伝達が格段に速くなるからね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あとがきです。
「樹です」
「暁です」
「「いつもお読みいただきありがとうございます」」
「注意事項分かった?」
「うん、風花を怒らせるな!」
「え、いや、まあ、そうなんだけどさ。何かあったの?」
「昨日の修行がさあ……確かに遠慮なくって言ったけど、あそこまで容赦ないとは思わなかったよ」
「そ、そうなんだ」
「でも、おかげで盗賊を簡単に無力化することができるようになったからね」
「うん、風花はそういうの得意だからね!」
「ところでさ、樹って夜に暴発することってないの?」
「えっ、さ、さあどうかなぁ?」
「やっぱり男と女じゃ気持ちいい感覚が違うんだろうか、それともリュザールに満足してい――」
「暁君! 何をやっているのかな?」
「ふ、風花さん!」
「修行足りなかった? もう一度、心行くまでしごいてあげようか」
「い、樹、助け……て…………」
「あ、暁……えっと、暁がいなくなったので、次回のお知らせを始めます。次回はみんなで暁の道場に行くみたいです。それでは次回もお楽しみにー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます