第178話 神様!?
「「「いっただきまーす!」」」「ニャー!」
三人分のおすそ分けを持って風花を家に送り届けた後、残った男三人とカァルとで食卓を囲んでいる。
「う、うまい! 剛が作ったとは思えない!」
「そうだろう。我ながらすごいと思うわ」
「すごい、すごいよ。おかわりお願い!」
ものすごい勢いで料理が無くなっていく。十代後半の男が三人集まったら、あれだけ作ったというのにあっという間だ。
「ニャァー……」
僕たちに負けないように猫用の料理を食べていたカァルも、お腹いっぱいになったのか、こちらに一緒に持ってきたお気に入りのマットの上で寝そべっている。
「あー、美味しかった。プロフってあちらでは何度も食べているはずなのに、こんな味だって思わなかったよ」
人間は、経験したことのない味や匂いは想像することができないって聞いたことがある。いくら夢の中でそれを食べていても、想像していたのものと違うのは仕方がないことだと思う。
「ねえ、暁。昼間カァルのことを【カァル】って言ったでしょう。それは何で?」
「え、そんなこと言ったっけ……」
あれ、もしかして無意識だったのかな。
「あー、もしかしたら、樹がお茶を入れてくれたでしょ。あの時に、あれ、チャムと同じ入れ方だと思ったんだよね。それで、あちらの記憶が強くなって出ちゃったんだと思う」
僕のお茶の入れ方は、ソルの時にミサフィ母さんから教わったやり方だ。ミサフィ母さんは、チャムさんのお母さんのサチェさんと一緒におばあちゃんから教わったって言っていた。それで、同じ入れ方になっているのかもしれない。
「それで暁は、いつからあちらのことを見るようになったの?」
「そうだな……これまでもたまには見ていたんだよね。ほんとにたまにだからその時は夢だと思っていた。でも、去年あたりかなはっきりと見るようになって、夢じゃないこれはどこかの現実だって思うようになったのは」
「去年というと、やっぱり俺たちと一緒に旅していたあたりから?」
「やっぱり? 旅のことはエキムの記憶でしかわからないけど、春になったばかりの頃だよね。まだ雪が残っていた印象があるから。その時ではなくて夏だよ。ちょうどエキムがカインに行ったあたり」
「変だな……どうして春の旅の時じゃなくて夏なんだろう」
春の方がエキムと一緒にいる時間が長かったはずだ。半月以上の間、四六時中行動を共にいていたからね。
「なあ、樹。夏休みって、俺たちこっちにいなかったか?」
ん? そうだ! 夏にエキムが来た時には僕たちは東京にいた。泊っていた夏さんの家は暁の家の近くだし、駒場キャンパスでは暁のお父さんの遠野教授とも会っていた。
「どういうこと?」
暁に僕たちが想像している、二つの世界が繋がる要因について教える。
「樹とソルが起点に……それで、それぞれの場所で二人の近くにいたら、元々繋がっているけど気付かなかったものが、わかるようになるってことかな」
どういう条件でそうなっているのかわからないけど、今までのことを考えるとそういうことのような気がする。ユーリルの時もユーリルがカインに来て間もなく、竹下が繋がりたいっていきなり言ってきたし、リムンとルーミンの時も二人がカインに来てから、地球の凪と海渡の繋がりが深くなっていた。
「ああ、ただほとんどの場合が地球からあちらのことが見えて、向こうからっていうのは少ないな」
そういえば、テラからこちらというのはサーシャぐらいじゃないかな。でもそれは、僕たちと会う前の話だから僕の力とは関係ない気がする。
「もしかしら、樹があちらの世界を良くしたいという気持ちが強くて、役に立ちそうな人を呼び寄せているとかじゃないの?」
「そうなのかな……」
確かにこれまで仲間になってくれたみんなのおかげで、テラでの生活が格段によくなったのは間違いない。
「ということは、だ。俺はあちらの神様かもしれない樹から選ばれた存在ってことだな!」
か、神様って……
「そ、そんなわけないよ。僕はただ……」
「まあまあ、
「もちろん。俺だって、あちらには大好きな奥さんと可愛い子供がいるんだぜ。今日みたいな目はもう二度とごめんだ……」
暁の目には決意のようなものが伺えた。
「それで、お前。明日は盗賊を退治できそうなの?」
そこが一番大事かもしれない。繋がっても盗賊を始末できなかったら、暁は心に傷を抱えることになるだろう。
「うん、樹に繋げてもらったら問題ない。風花から必殺技を教えてもらったね!」
必殺技って……、風花そんなもの持っていたんだ。
「お前、適当なこと言うなよ」
「ばれたか。でも、仮に盗賊が10人いても大丈夫なくらいの技は教えてもらったよ。これで村のみんなを助けることができる」
暁も古武術の基礎があったから、この短時間で風花からの技を得ることができたんだと思う。
「それでも、いきなりの実戦で大丈夫なの?」
失敗は許されない。それこそ村人全員が皆殺しされる可能性だってある。
「うーん、ほんとは内緒なんだけど、これだけの秘密を共有しているんだから、話さない方がおかしいよな……」
「もったいぶらずに早く言えよ!」
辺りを見回しながら暁は僕たちに教えてくれた。
「誰にも言わないでくれよ、実は俺の家って忍者の末裔なんだ」
それこそ、ほんとかどうかわからないけど、明日のタルブクの運命は暁とエキムにかかっているのは間違いない。
その後、みんなで片づけを済ませ、それぞれお風呂に入り、夜を迎えた。
「どうして三人一緒の部屋で寝るわけ?」
「ニャ!」
「三人だけじゃないね。カァルも一緒だね」
「風花がさ、樹が誰かと二人っきりって嫌がるんだよ。カァルがいてくれてもいいんだけど、俺が今日はカァルと一緒に寝たいからな。諦めてくれ」
というわけで、僕の部屋に竹下とお客様用の布団を持ち込んで、男三人とオス猫一匹が集まって川の字になって寝ることになった。
「それじゃ、お休みー」
左手に暁の体温を感じながら、いつものように意識が切り替わるのを感じた。
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あとがきです。
「竹下です」
「暁です」
「「いつもお読みいただきありがとうございます」」
「お前本当に忍者なの?」
「忍者って言うか末裔ね」
「それにしては話し方普通じゃん。ござるとかニンニンとか言わないの?」
「ニンニンって……それ、何?」
「えっ! 昔の漫画やアニメのキャラの喋り方で……」
「知らないなー」
「うぅー、知らないこと振ってしまって反応が無いとか、むちゃ恥ずかしいんだけど」
「あはは、ごめんね知ってるよ。剛
「知ってるじゃん! で、言わないの?」
「言わないよ。忍んで生きているからね。俺たちは空気みたいな存在だよ」
「えーと、さて、次回のご案内です」
「ち、ちょ! なんか言ってよ!」
「戯言には付き合っとられん! 内容は、久しぶりにテラでのお話ですね」
「そっちから振っといてこういう扱いなんだ。ニントモカントモ、困ったでござる!」
「次回もお楽しみに―」
「ニンニン」
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