情報

 リンの降らせていた雨と同じ雨が降ったことを帰って家族に伝えた。

 みんな少しほっとしたような顔をした後、木彫りの竜に改めてリンの無事を祈った。


それでもなにか進展があるわけではなく、日々をすごした。

朝夕の鍛錬は欠かさなかったし、料理も繕いものも上手になった。

爺ちゃんとアルヴァ叔父さんは、リンを探せるように薬草の販路を広げて、遠くまで足を延ばすようになり、僕もできるだけお供した。


 それからしばらく経ったある朝、珍しくコハクが家に訪ねてきた。

「アオフジが気になることがあるから来てほしいってさ」

 皆それぞれリンを探しているが完全に行き詰っていた。ほんの少しでも情報が欲しくて家族全員で泉へ向かった。



「…この泉なんだけど。とても弱く竜の気配がするの」

 大人数で押し寄せてしまったので、恥ずかしがりのアオフジはコハクの後ろに隠れたと思ったら、それっきり泉に溶けてしまった。


「気配は竜の縄張り程は強い気配では無いから、弱った竜がいるか、竜の降らせた雨が流れ込んでいる可能性があると思うよ」

 コハクがそう言うと泉の中には満点の星空と赤い屋根の小屋が映しだされた。その泉の中から見上げた景色だろうか。


 うちにある薬草たちに似た草と、葉も茎も細く紫色の花がフワフワ連なっている植物が茂っていて、絵本に出てくる魔女の家のような幻想的な景色だった。

「西へ153km、北へ78km」

 泉から少し顔を出してアオフジがつぶやく。


「えーっと、距離だと6日と3日…10日以上は掛かるな。ガノーナ地方かな?家に戻って地図を探してみよう」

 爺ちゃんだけが場所に心当たりがあるようだった。


 家に帰るとすぐに爺ちゃんが地図を出してきた。古い地図で手書きのメモが書き込まれていてボロボロだ。

「う~ん、地図も古いし正確にはわからないけど、この辺り、ガルテンという村のあたりかな?」

 爺ちゃんは指で地図をトントンしながら日数を数えてる


「歩いて16日ってとこかな…この近くまでは昔、行ったことがある。私が探しに行こうと思う」

 初めてのリンに繋がるかもしれない情報だ、僕も探しに行きたい。

 でも母さんとの約束の15歳までまだ3年以上ある。『僕が行きたい』と口から洩れてしまわないように手を握り締めた。


「父さん、これは私の2か月の稼ぎよ。二人分の往復の宿代がギリギリ足りる金額だと思うの。アークを一緒に連れて行って」

 僕はびっくりして母さんの顔を見上げた。


「アークはお爺ちゃんと一緒に行きなさい。他に食事代、馬車の代金、必要なものを揃えないといけないから足りないかもしれない。でも、出せるのはこのお金が精いっぱいよ。お金が半分になったら目的地の途中でも帰ってきなさい。それが条件よ」


「では、私は保護者兼、見張りという立場で付き添おう。自分の旅費は自分で持つからアメリアからは半額受け取りなさい。それでお金の管理も一人で考えるんだ。もちろん、そのお金が半分になったら連れて帰る。ちゃんと戻ってくることが一番大切だからな」

「わかった」

「出発は4日後にしよう。必要な荷物も自分で考えて揃えてみなさい」

 僕はやっとリンを探しに旅に出ることになった。

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