第九十二話「最終決戦その2」

 Side ランシス


『アインブラッドタイプを引っ張り出してくるのは想定済みだ――それで僕に勝てるとでも?』


『勝てる勝てないじゃない!! 必ず勝つ!!』


 そう皆に誓ったのだ、私は!!


『ランシス、援護を――』


『不要だ!!』


 緋田 キンジと言う自衛官の援護の申し出は断った。

 

『プライドと言う奴かい?』


 ノアが挑発するように語り掛ける。


『ああそうだ!! 私はリビルドアーミーのためだけではない。この世界のためと思って手を汚し続けて来た!!』


『そんな君だからスペアプランだったのさ』


『スペアプランだと!?』


 近接戦で猛攻を嗾けてはいるが、相手は余裕を崩さない。

 バリアに阻まれ、敵のバインダーによるオールレンジ攻撃で手痛い反撃を食らう始末だ。


『アーティスが万が一失敗した場合の保険と言う奴さ』


『そうやって貴様はどれだけの人間の人生を弄んできた!?』


『これもこの世界のためさ――ッ!?』


 すると遠方から大きなビームが飛んでくる。

 射線を追うとオードンやカーマンがいた。

 オードンはゴルディアス。

 カーマンはピンク色のカーマンスペシャル。


 そして私の部下のスカーレット、リシャがいた。

 他にも部下が沢山ついてきている。


『隊長、無理をなさらずに!!』


 と、スカーレットが言ってきた。


『どうしてついてきた!?』


『私達は隊長についていくと決めたのです!! それ以外に理由は不要ですか!?』


 と、捲し立てるようにスカーレットは言う。


『そう言う事よ!! 雑魚は任せときなさい!!』


 カーマンがそう言ってノアの周辺を飛び回っているバルキリータイプのパワーローダーを的確に破壊していく。

 リシャや部下達もカーマンに続いていた。


『オードン、君も歯向かうか。能力あるけど己の才に自惚れて破滅すると思ったけど、予想外の展開だよこれは』


『何でもかんでもお前の思い通りになってたまるか!!』

 

 そう言ってオードンは大きなビームバズーカを発射するが今度は避けられてしまう。


『そう何度も当たらないよ』


 そう言ってノアは大空高く飛び上がり、距離を取り、バインダーを周辺に集めて展開。

 私は(まずい!!)と思ったが――


『全攻撃をノアに集めて!! 攻撃させちゃダメよ!!』


 カーマンとその部下達がビーム攻撃を集中させる。

 ノアはバリアで攻撃を防ぎながら回避行動をとるが――


『そこだ!!』


 バインターの一つを切り落とし、ノアにビームサーベルで斬りかかる。 

 バリアに阻まれる。

 

『何度やっても――』


『そこだ!!』


『ッ!?』


 オードンもビームサーベルを抜いて斬りかかった。


『俺達の事はいい!! バインダーに攻撃を集中させろ!!』


 斬りかかりながらオードンは指示を飛ばす。


『ええい!! うっとおしい!!』


 ノアは力任せに両者を引き剥がす。

 同時にオードンは胸部からビーム砲を発射する。

 ランシスもフライトユニットに内蔵されていた二門のビーム砲を乱射する。

 

 ノアは若干黒焦げになりながら撤退していった。


『ここは私達に任せて二人は追いなさい!!』


 カーマンがそう言い、


『カーマンの言う通りに!! 隊長!!』


 スカーレットもそう言った。


『行くぞランシス!!』


『まさかお前と手を組むことになろうとはな!!』


『言ってろ!!』


 私はオードンと軽口を叩き合いながらその場を後にし、ノアの後を追った。



 Side カーマン


 ボウヤ達が言ったわね。


 ちょっと見ない間に男をあげちゃって……


 後、やる事があるとすればこの場で出来る限り敵を惹きつける事ぐらいかしら。


『スカーレット、あなたランシスの後を追いたくなかったんじゃないの?』


 ランシスの副官であるスカーレットに尋ねる。


『いいえ、構いません。隊長を信じてますから』


『そう。部下に恵まれたのねランシスは』


 ランシスもオードンも不器用な男だったわ。

 だけど不器用な男は不器用な男なりにこの僅かな短期間で成長したみたいね。


『じゃあ、はじめようかしら』


 私のパワーローダー、カーマンスペシャルの火器が一斉に火を噴く。

 最後の最後まで魅了してあげるわフォボスちゃん。 

 

☆ 


 Side スカーレット


 本当は隊長と一緒に行きたかった。

 

 だけど私は隊長を信じた。

 

 この戦いにリビルドアーミーだけでなく世界の未来が掛かっている。


 その願いを隊長に託した。


(悪逆非道のリビルドアーミーがまさか世界を救うために戦う事になるとはな――)


 過去の自分に言っても信じてはくれないだろう。

 フォボスと同じぐらいの巨悪の自分達が平和のために戦うなど皮肉が効きすぎている。


 だけど、今この瞬間こそがリビルドアーミーが目指した、隊長が夢見た瞬間なのだろう。


(だからこそ生き抜く!!)


 だから私は戦い抜こう。

 まだ変わったばかりなのだ。

 ノアを、フォボスを倒したその先に辿り着いてようやくはじまるのだ。

 隊長の理想が。


 その理想を、リビルドアーミーが、リビルドシティが変わるところを見届けたい。

 

 この場にいるリビルドアーミーの兵士達も同じような気持ちだろう。

  

(必ず帰って来てくださいよ、隊長……)


 その気持ちを押し殺しながら私は部下達に必死に支持を飛ばす。

  

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