第102話『プロトタイプ』!

 ペガサスのヘッドライトに、巨大な卵型の装置が照らし出された。 


 ……俺を騙し『特務機関1〇〇ひとまるまる』のデータ全てを奪取すべく造られた文字通りダルメシアンの『最後のとりで』だ。


************


 祐希さんを始めとした『1〇〇ひとまるまる』の重要な任務の1つ、稼働中の『中央演算装置』にウイルスを仕込み、あらゆるデータを入手する事……に目を付けた俺の伯父『法外 もとむ』は、その成果を横取りしようと画策した。


 伯父は『1〇〇ひとまるまる』の前身である『能力科学研究所』……コードネーム『九十九つくも』で長年に渡り『超能力』の研究をしていた。 そのノウハウを駆使して、計画の邪魔になる俺を排除しようとしたり、祐希さんを遠隔操作したり……を試みたが、ことごとく失敗した。


 ……諦めきれない伯父は、更に行動を起こした。 『死なない1〇〇ひとまるまる』と銘打った、AIのみで構成された『1〇1ひとまるひと』を誕生させ、祐希さんを探し、強制的に連行しようと目論んだのである


************


もとむ伯父さん、聴こえてる?」


「……」


 ……返答が無い。



かけるさん!」


 ……ゆうきちゃんだ。 ……さっきの抑揚の無い音声とは全く違う、元の声に戻っている。


「ゆうきちゃん! 大丈夫!?」


「……虚偽の情報をお伝えしてしまい、大変申し訳御座いませんでした。 これは私の『仕様』によるものです」


「仕様?」


「はい。 私は、全世界に存在する中央演算装置から情報を得る事が可能ですが、それを遮断され、偏った情報のみを与えられた場合、その情報が真実か虚偽かの判断は出来ない仕様です」


 ……そうか……今回、あのデカい卵状のラスボスの中では外部からの全ての情報が遮断され、求伯父さんからの情報一択になっていたから、情報の比較・検討が出来なくて、こんなに優秀なゆうきちゃんでさえ、見事に騙されちゃったわけだ。


 ……確かに、人間の俺も、初めはゆうきちゃんからの情報を信じちゃったもんな。


「加えて報告致します。 先程より割り込み通信をしていたのは、実は駆さんの伯父様ではありません!」


「……!?」


「あれは……『もとむくん』 ……私『ゆうきちゃん』の『プロトタイプ』……です!」


 な ん で す と 〜 っ !?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る