第101話 回頭!

 ……俺の考えが正しければ、この短針の斉射で、全てが判明する筈だ!


 ……


 …………



 ……………………



『ジャッ!』


 ……! 


 真空中は音波が伝わらないので本来『音』は聞こえない。 しかし今、はっきりと『ジャッ♡』って音が聴こえた。 ← 恐らく、俺の『ロケート・スティッカー(空間固定)能力』によって、振動がペガサスまで伝達されたんだろう。


 ……地球に向けて『短針ニードル』を撃ったところで、それは大気圏突入と同時に消滅し、何も起きない。 ……光すら発生させないだろう。


 それなのに、今、『NG』特有の破壊音がして……正面にポッカリと大きな『穴』が出現した!


 ……更にその先には……



 ……!


 美しい!


 涙が出るほど美しい星……『地球』がいる!


 これで、地表におびただしい数の『照明』がともっているのが『証明』された訳だ!


 生命の滅亡は欺瞞ぎまんだったのだ。



 ……さて! 解説しよう。


 ……脳を騙すのは実に簡単だ。 目と耳に『虚偽』の情報を与えれば『脳』……即ち『ヒト』はあっさり騙せる。『VR』が、まさしくそうだ。


 ……俺は、もとむ伯父さんの発言に対する違和感と、直感を信じて、改めて熟考してみた。


 生命が絶滅した……との情報は、この目に映った『暗黒の地表』と『声』……それと、無反応の通信だけだ。


『乗用車』である『ペガサス』を丸ごと囲む大きさの『スクリーン』に『死の星』の映像を投影し、通信にジャミングをかければ『絶滅』を演出出来るんじゃないか? ……そう思った俺は、その『スクリーン』の破壊を試みたのだ。


 ……スクリーンに穴が開いたのと同時に、堰を切ったように通信が飛び込んで来た!



「法外君! 法外君ッ!」


「勝目博士ーッ!」 ……悔しいが、こんなおっさんの声に感動してしまった!


「法外さん! 良かった! 聴こえますか!?」


 おお! 浅利さんだあ!


「急に『ペガサス』と法外さんが追跡トレース出来なくなったから心配したよ〜!」……浅利さんは涙声で言った。


「心配かけてゴメン! 詳しい事は後から話す! 俺は……最後の『ダルメシアン』と決着をつける!」


 俺は、スクリーンに開いた穴から脱出し、180度回頭して ……最後の『ダルメシアン』と対峙した!

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