第89話 ノイズ!

 その時! 突然、車内に浅利さんの声が響いた!


「ゆうきちゃん! マイクオフ! ノイズ音最大!」


 な? なんだあ!?


『ザーーーーーーーッ!』


 うわーーーっ! み、耳が痛い!


 浅利さん! なにすんの〜!?


 ……次いで、浅利さんの骨導音声が、俺の頭の中に大音量で響いた!


「法外さん! 中央パネルをタップして『ノイズ』をミュート! ゆうきちゃんのマイクをオン!」


 俺は理由も判らないまま、浅利さんに言われるがままにパネルを操作した。


 ……耳が『キィーーーーン』と鳴って、何も聴こえないが、骨導音声は聴こえる。


「駆さん! 1〇〇ひとまるまるの作戦行動が奏功しました! 敵ダルメシアン端末9体、完全機能停止中! 60秒以内に、全機『NG』による破壊を具申します!」


「お……おう……」


 ……俺は、理由が判らないまま、全く動かない、9体の『メシアン』を木っ端微塵にした。 30秒もかかっていない……。 こんな簡単な仕事は無い。


「駆さん! お見事です! では、再び浮上します。 軌道計算完了。 ……窓を閉め、シートベルトをお締め下さい」


 ゆうきちゃんの「テイク・オフ」……の掛け声と共に、ペガサスが離陸した。



 ……さっきまで、絶望の淵にいたのに……この急展開は……何?


「駆さん。 1〇〇ひとまるまる、エージェント『A.A』より、映像通信入電中。 ……受信しますか?」


「是非、頼む!」……俺は何よりも、今、何が起きたか……を知りたかった。


 中央パネルに、笑顔の浅利さんと……


 あ〜! 鵜目うのめさん! 笑顔の鵜目さんが、可愛く手を降っている!


 ……これで謎が解けた!



**********


 ……常に法外の状況をモニターしていた浅利は、法外の能力の唯一の弱点『1次固定しか出来ない』という事に気付いていた。 その為、ダルメシアンが二重構造で襲撃するであろう事も想定していたのだ。


『100%、駄洒落を聴かせた相手を気絶させる能力』を持つJK『鵜目うのめ貴子たかこ』の能力は、AIにも効力を発揮する。


 先ず、ゆうきちゃんの『耳』であるマイクをミュートし、宇宙服を身に着けているであろう法外の耳を塞ぐ為に大音量のノイズを流させた。


 ……そして、特務機関1〇〇は、その特権全てを以て、前代未聞の『全世界一斉駄洒落放送』を行った! ……その内容は……


 鵜目の『布団が吹っ飛んだ!』だった。


 日本で一番有名なダジャレが世界に進出した決定的瞬間だった。


 残念ながら、聴いた人々やAIはその時の記憶を無くしているので、実際は記録に残る事は無いのだが……。

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