第86話 天国!

 あー……ついに俺……死んじゃったんだなー……と思ったが、様子が違う。


 ……ここは、間違いなくペガサスの中で、内装は、眼が届く範囲内に損傷は無さそうだった。 ……急に圧迫が緩まったのは、ペガサスのエアバッグが収納されたからだ。


 ドアを開け、ペガサスから降りた。


 ……さっきまでの、ジェットコースターを巨大なミキサーに投げ込んでめちゃめちゃに撹拌かくはんし、その周辺でダイナマイトを一気に爆発させたかのような轟音と衝撃が嘘のように、爽やかな風と鳥の鳴き声……そして、トロピカルフルーツのような香りが鼻腔をくすぐった。


 やっぱり天国なのでは?……と周りを見渡したら、ここが『天国』ではない事に気付かされた。


 少し離れた場所から黒煙が上がっていた。


「……ゆうき……ちゃん……説明してくれる?」……噴火したかのような、おどろおどろしい黒煙に眼を奪われつつ、1オクターブくらい高い声で、ゆうきちゃんに何が起きたのかを聴いた。



 ……大気圏を突入したペガサスは、メイソン・アイランドを直撃し、島もろとも10体のダルメシアン端末を消滅させた。 それと同時に、俺の『ロケート・スティッカー』能力によってペガサス落下の衝撃を最小限に抑え込み、車体が海中深く潜り込むのを防いでいたらしいのだ。


 ……その後、ゆうきちゃんの自動運転によって、近くの安全な無人島に移動し、現在に至る……との事だった。


 ペガサスの車体を確認したが、傷1つ、汚れ1つ無い! 初めて見た時と全く変わらない、ピッカピカの新車のような輝きを放っている! ……俺の100%の能力が車体を固定していたからか、元々頑丈なのか……。




『バラバラバラ……』と言うローター音が聞こえ始めた。 黒煙と島の消滅を報道する為に、何処どこかの国のテレビ局がヘリコプターを飛ばしたようだ。


 ……何かの拍子で発見されてはまずい。 暫く、目立たなそうな場所にペガサスを隠し、様子を見ることにした。


 残存するダルメシアン端末は21体……。 そのうち、ゆうきちゃんが行動予測している端末は10体。 ……残り11体は、動静が全く把握出来ていない……。


『ビーッ! ビーッ!』……と、警告アラート音が鳴り響いた! そして、慌てたようなゆうきちゃんの声がスピーカーから発せられた!


かけるさん! 緊急警報! 行動予測済のダルメシアン端末10体、接近中!」

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