第85話 プラズマ!

 万事休す!


 ……『NGニードル・ガン』の『ニードル』が無ければ『端末ダルメシアン』の破壊が出来ない。


「ゆうきちゃん! 『針』を何かで代用する事は可能?」


「はい。 当機に搭載されている『化石燃料』を圧縮し、発砲すれば『端末』の破壊は可能です」


 お〜! 良かった! 何とかなりそうだ!


 ……と安心したのも束の間……


「……しかし、大気圏再突入時に燃料不足になります。 姿勢制御が出来ない為、帰還は不可能です」


 ダメじゃん……。


「『サルタヒコ』にはガソリンとか代用品とかは無い?」


「はい。 残念ですが、軍事監視衛星『サルタヒコ』に、今回のミッションに流用可能な物品は搭載されておりません」


 ……俺はアクセルから足を離し推進を止めた。


 文字通り『一難去ってまた一難』……だ。


 ……いや、もとい! まだ最初の『一難』すら去って無いじゃん!


 ここまで来ておめおめと引き返す訳にはいかない! 断じて!


 絶対に攻略方法はある筈だ! ……俺の曽祖父は、かつて関東を壊滅させた程の『能力者』だったという。 ……俺は『破壊』は得意ではないが『固定能力』は『100%』を誇る! 奴等がその対抗策を講じる前に『NG』無しで破壊する方法か……。


 …………


 …………


「ぷっ」……俺は、つい吹き出してしまった。 『案ずるより産むがやすし』か…… 昔の人は良い事を言ったもんだなぁ。


 わざわざ残数の少ない『短針ニードル』を使う事はない。 ボルトでも石でもなんでも良いから、俺の『固定能力』で『急降下慣性射撃』をピンポイントで行えばあっさり撃破できる!


 いざとなれば、体当たりだって大丈夫な筈だ! ……理屈では……な!


「ゆうきちゃん! OKだ! 行くぜ!」


 俺はゆうきちゃんに、一番近くにコソコソ隠れ、俺の攻略方法を考えているであろう『端末ダルメシアン』の位置を訊ねた。


「端末10体、当機直下『メイソン・アイランド』に感!」


「そこは、住人居る?」


「……生命反応無し。 住人、生物等、皆無です!」


 ……これは都合が良い! このまま、隕石のように自然落下して、島もろともダルメシアンをぶっ壊しちゃえ!


「よ〜しっ! 突撃〜っ!」


 俺は、ペガサスのハンドルを操作し、進行方向を直下に向けた。 そしてそのまま……


 特に前方に『ロケート・スティッカー能力』を集中させ、大気圏に再突入した!


 ……昔、何かで見たが、大気圏突入時には、装置や隕石が大気との摩擦により燃焼し、対策をしていない物は燃え尽きてしまう。


 しかし、このペガサスには……俺が居る! 今、俺の『怒りの焔』は、プラズマより熱い! 祐希ゆうきさんを苦しめた奴は、何が何でもぶっ潰す!


「行っけ〜〜〜!」



 ……ここで問題が起きた。 車体全てを固定しているとは言え、超高速で落下しているので、全身に強力な重力がかかったのだ。 


 ……目がボヤけ、俺の意識は、だんだん遠のいた。


 ……最後に見たのは……前方モニターに映る『メイソン・アイランド』だった。


 ……


 ……!


 ……けたたましい轟音と、凄まじい衝撃で、漫画みたいに眼から星が出た! 驚いて、一瞬気が付きかけたが、俺は再び意識を失ってしまったようだ……。



 ……んぐ! 息……苦しい! ……身動きが取れない……。


「む! むうみみゃん」……顔を何かが覆っていて、口が開かない!


 ……と、唐突に身体が楽になり、眩い光が降り注いだ。


「……? ここは?」


 ……そこは……


『楽園』……だった……!?

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