第21話 南部方面軍司令部(2)

【32日目 午後4時頃 シリトン】


 南部方面軍司令官サミュル・ヴェルディ中将の機嫌は大変に良さそうだった。



「司令官、非常に友好的な会談でしたね。しかも皇女姉君御一行は皆さま温厚で実に和かに我々にも応対していただきました。恐らく満足していただけたのではないでしょうか。情報官のご指導の『丁重に接遇せよ』とのお言葉、立派に果たせたかと考えます」


「うむ。君の接遇指導も立派なものだよ。流石は『接待のフェデリーコ』と言われた事があるだけある。

しかし、あの皇女姉君。アリス様と仰っていたが自分でもマルチナ皇女の姉だとハッキリ言ってたな。本当に姉なんだろうか。こっちからは本当ですかとも聞けないから困るな」


「本当に姉かは知らないですけど皇女姉君って国家安全保障会議で決定されているのだから悩む必要はありませんよ。

それより明日の朝迄に取り敢えず金貨100枚頂戴と言うお願いはどうしますか。

皇女姉君殿下の目的も能力も何一つ聞き出せてませんけど」


「え。そんなの準備するに決まっとる。おーい会計課長呼んでくれ」



 司令官ヴェルディ中将は副司令官アメーリア中将をしかと見据えて語り続ける。



「副司令官。金貨100枚程度であの謎の超技術を即座に行使できる皇女姉君の機嫌を取れるなら安いものだ。

あの大規模検索で幾ら掛かったと思っとる。金貨一万枚だぞ。

何の結果も出なかったばかりか、もしかしたら皇女姉君殿下に不快な思いをさせた金貨一万枚と明日お渡しすれば間違いなく有難うと言われる金貨100枚。どっちが効果的な予算の執行かは火を見るよりも明らかである。全て皇女姉君接遇予算に計上できる」



 ノックの後に会計課長が入室してきた。



「ああ会計課長か。明日の朝までに金貨100枚準備してくれ。皇女姉君の御要請だ。朝一番に現金で綺麗にピカピカにして帯封で綺麗に揃えて置いてくれ。お持ち帰りに使える新品の皮袋も付けてな。

朝のご挨拶の時にお渡しするから君も一緒に来てくれたまえ。領収のサインとか取らないからな。じゃ頼むぞ」



 司令官と副司令官の二人はその後シリトン市街の高級宿屋「高目」のフロア貸し切りや食事のメニュー。風呂の構造がどうなっているかなど細かく確認して指導を加えた上、明日以降に何を視察してもらって皇女姉の機嫌を取るかについて細かく検討を加えていくのだった。







 南部方面軍司令官と副司令官との懇談を終えた皇女姉君一行。アリス他2名と一匹は控え室でゆったりと休憩していた。


 ビアンコ中尉とは違う若手女性軍人が3名やって来て、お茶とお茶受けを3人にそれぞれ運んでくれる。何と「猫ちゃんにお水をどうぞ」と水の入った深皿を用意してくれていた。


 彼女達が退出した後、ビアンコ中尉がノックして入室してきた。



「皇女姉君殿下。シリトン市街地の宿屋『高目』を御宿泊地として準備しております。移動の馬車も準備できておりますので何時でもお声がけ下さい。


「宿屋には何名か警備の者を配置させて頂くことお許し頂きたいと存じます。

明日は朝食後ゆったりとされて頂いて10時にお迎えに上がります。


「司令部到着後は南部方面軍の概況説明ということで方面軍の編成、任務、活動状況などの御説明がございます。


「昼食後、ご希望が特に御座いませんでしたらこの駐屯地とシリトン市街地の御視察並びにシリトン領館を御訪問。シリトン子爵の御挨拶を受けて頂こうかと計画しております。如何でしょうか?」


「えっと、司令官のお話ですと5日〜6日後に公都から責任ある人達が来て色々とお話し合いを行いたい旨お伺いしました。

私たちとしては、それまでは一日中イベントを組まれるより昼食後の午後は宿屋に戻ってゆっくりさせて頂きたいと思います。

勿論、先程に説明のあった視察とかは明後日以降に入れて下さい。

それに可能なら戦闘訓練の視察や魔法訓練の視察。観閲訓練の視察などを計画して頂けると嬉しいです。


「あと明日の朝に私が雇用するロードナイトの風という傭兵パーティがこの司令部に来ます。

来たら私達に面会できる様に案内して欲しいのです。概況説明中でも中断して教えてください。お願いします」



 ビアンコ中尉は私のリクエストを一つ一つノートにメモしていく。出来る人っぽいよね。メモする姿も絵になるなあ。



「承りました。必ず司令官並びに担当者へ伝えて遺漏なく処置致します。それでは移動される時お声がけください。失礼します」


「今日はありがとう。明日もお願いしますね」ニッコリ。


 ビアンコ中尉もニッコリしてくれる。ふふ、何度見ても良いね。





 ふう。なかなか有意義な訪問だったな。司令官は最初はキョドッていたけど直ぐに気のいいお爺さんになって調子良くお話してくれたし。ビアンコ中尉は凛々しくて素敵だし。儀仗隊分隊長もそこそこイケメンでー



「アリス様。本日は実に嬉しそうでご満足そうで、かなり興奮してらっしゃいましたね。軍隊がお好きなんですか?」


「そうそう。言ってなかったけど私は異世界のアースで。私が元いた世界ね。そこで軍人だったんだよ。そこで4年間勤務した。士官候補生学校を含めると8年間。多分だけどイースには無い『空軍』という種類で空を飛んで空で闘う軍だったんだ。面白いでしょ」


「日本の航空自衛隊ですね。『アース日本軍事知識(超簡略版)』にブックマークが一杯付いているから暇な時にチェックさせて戴きました」


「そう。私はそこで中尉だった。

これから訓練や戦闘行動の時はアリス中尉もしくは中尉と呼んでもらおうかな。ふふ。何か気分が上がるね」


「む。それでは私にも階級を下さい」


「うん。グレタさんキアラさんにはロードナイトでは助けられたからね。十分に軍人としての能力は有るでしょう。

えーっと。グレタ中尉とキアラ少尉にするかなー。何か希望ある?」


「アリス様が中尉ですと私たち士官の階級選択肢が少尉一択になってしまいます。

亜神アリス様なのですから元帥もしくは大将くらいがよろしいのではないでしょうか」


「うん。そうかもだけど中尉だった身からするとイメージ湧かないんだよねー。現場で直接戦闘に携わるなら中佐がギリギリじゃないかな?」


「ではぜひ中佐にしてください。でないと困ります。本当に」


「分かったよ。そしたら私が中佐でグレタさんが少佐。キアラさんが大尉にする?」


「私が少佐なのは年齢的に妥当な線だと思いますがキアラが大尉というのは可笑しくありませんか? 若すぎて」


「お母さん私は良いと思うよ。キアラ大尉で行こうよ。あたしだけ下っ端は嫌だよ」


「年齢で行くと二等兵とか三等兵になっちゃう。武力組織の階級はどの様な役割を担っているのか? 戦闘能力はどうなのか? これらを踏まえて決定すべきか。ロードナイトで公爵軍の手練れ4名を圧倒した戦闘能力と「動物の王」の特殊能力。

場合によってはキアラ単独の作戦行動を自己判断で行うケースが想定される事などを考慮してー。


「現有戦闘能力と各種判断を委任する点で士官で有る事は必須。大尉が年上っぽくて嫌なら印象が若々しい少尉か中尉だね」


「そういえばビアンコさん中尉だったな。あたしが大尉とか中尉だとビアンコさんと同格以上ってことか。分かりました。キアラ少尉で行きます」


「よし。グレタ少佐、キアラ少尉。ボブは軍曹でいいか。寝てて話聞いてないけど。


「たった今グレタ、キアラ、ボブの3名を亜神アリスの名において、それぞれの階級に任命します。特にグレタ、キアラ両名はコミッションド・オフィサーであるからして責任は重大です。常に私アリスと共にいて欲しい。以後は必要に応じて階級呼称を行うものとします。


「それから敬礼はイース式の右掌を左胸ではなく右掌を顔の右側に持ってくるアース式で行くからよろしくね。こうだよ。」



 ピシッと敬礼をキメる。



「キアラ少尉了解!」敬礼ピシッ!


「グレタ少佐了解です。」敬礼キリッ!




 ふふ。これで良し。




 これが後のイース世界最強「亜神アリス軍団」誕生の瞬間だったーーなんちゃって。

団員を募集する予定は無いから軍団にはならないのだ。




名前 グレタ・アルタムラ

種族 人(女性) 

年齢 35  体力G  魔力F

魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5

称号 マルチナの侍女頭

   亜神(時空)アリスの第1使徒

   亜神アリス軍団少佐


名前 キアラ・アルタムラ

種族 人(女性) 

年齢 14  体力G  魔力F

魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

   動物調教5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5

称号 マルチナの侍女

   亜神(時空)アリスの第2使徒

   動物の王

   亜神アリス軍団少尉


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