第三日
ゲームは始まった。
ステージに続々とプレイヤーキャラがログオンしてくる。
ゲームスタートが宣され、三十二人のプレイヤーキャラが戦闘開始する。
彼らの武器は剣だ。
一か所に集まって剣を振り合い、後ろから斬られたり、数人がかりで袋叩きにされたり。
あっと言う間にキャラクターたちは死んで亡霊の姿になっていく。
最後の生き残り一人が決まって今回の戦いは決着した。
そして彼らは異口同音に同じセリフを言った。
「クソゲー!」
アルマはそれを見て寂しそうにつぶやく。
「前のアルティマウォーズと同じだよ。懐かしいな……」
エイジは彼らの感想が理不尽だと憤りかけて、ふと思い出す。
そういえば企画書を読んだときに自分もこんなゲームはつまらないと思ったはずだ。
その企画書どおりに、いや、むしろ劣化したものを作ったのにどうして受けると思っていたのだろう。
そうだ、自分が作ったから自分に酔っていたのだ。
サービス開始時点がこのゲームのピークだった。
時を追うにつれてプレイヤーの参加数は減っていき、そして遂にあのメッセージが天に浮かび上がった。
<ログアウトしてください。サービス終了まで後30秒です。29、28……>
エイジはそれを無言で見上げる。
もはやログアウトするプレイヤーは居もしないのに虚しくカウントダウンは進む。
アルマはエイジの胸にしがみつく。
「神様…… 何がいけなかったんですか。あたしが何もしなかったからですか。どうすればよかったんですか、エイジさまあああ!」
「俺も…… 何もしなかった…… でも、どうすればよかったんだ……」
そしてアルティマウォーズの世界は崩壊した。
気付くと詠司は一人で開発室にいた。
「なんだ、やっぱり夢だったのか……」
だが開発室の様子がおかしい。
PCやディスプレイは壊れ、床に転がり、窓は割れている。まるで廃墟だ。
詠司はビルの窓から外を見る。街には人っ子一人見当たらない。静まりかえっている。
その代わりに信じられないものを空に見た。
<地球創造ゲームのサービスを終了します。これまでのご愛顧ありがとうございました>
またしても世界が崩壊し始める。詠司は絶叫した。
意識を取り戻した彼は暗闇の中を漂っていた。
上も下も光もない。
覚えのある体験だ。
必死の思いでエイジは祈るように唱える。
「ライトよ、あれ」
天に光球が現れる。
光に照らされて、目前に少女が浮かび上がる。
「アルマ!」
「エイジ様!」
アルマはエイジの胸にしがみつく。しかし先ほどとは表情が違っていた。
「エイジ様、同じじゃダメなの。同じことをしても同じように滅んじゃうの」
アルマはまっすぐにエイジの目を見ている。エイジは目をそらさずに答える。
「俺は何も考えていなかった。今度は…… 今度こそは」
エイジにとって、もはやこれが夢なのかどうかはどうでもよくなっていた。ここはゲーム開発者にとって逃げることができない真実の世界なのだ。
アルマの頭上には新たなステータスが浮かび上がっていた。
UL-MA <KPIのスキルを獲得しました>
そしてエイジの頭上にもまた。
CREATOR エイジ Level2
かくて神は新たな光をともした。
第三日である。
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