第17話 僕の知らない彼女 ACT 2

僕がこの三浦家に居候? することになり、1か月以上がたった……というのに、恵美との距離は遠のく一方だ。


確かに始めは彼女も物凄く気まずい思いをしているだろう。最も僕自身もとても気まずいというのは変わりはないのだが、お互いなんだ、あんな形でも告った仲だ。しかも恵美から一方的に振られている。


まぁ、進展といえば、家の中では恵美さんというのもなんとなく変だ。と、いうのに気づいたことだ。


正樹さんや、ミリッツアさんからも「なんだよ。互い幼馴染同士だし、俺らは家族みてぇなもんだと持ってんだから、そんな他人行儀みてぇな呼び方してたらこっちがムズムズしてしまう」なんて言われ、恵美自体も「別にこの家の中でだったらそれでいけど」というのでなんとなく「恵美」と呼ぶのに抵抗がなくなってきたのもここ最近だ。


このなんとなくというところがまぁ一番肝心なところなんだろうけど。

それでも恵美は、僕に対しては冷たいというか、避けているといった方が正しいだろう。


家の中にいても顔を合わせることも本当に少ない。

だからできるだけ僕は居間ではあまり時間を使わない。僕が居れば、恵美はすぐに自分の部屋に閉じこもってしまう。夕食にしたって時間はずらしてきている。

つまりわだ。僕と顔を合わせたくもないし、会話すらしたくないということなんだろう。


家でも、会話なし。

学校でも会話なし。

街ですれ違っても全くの無反応。


ここまで徹底しているのになぜ? なぜ、北城先生にはあんなこと言っているんだ!

ホント、嘘だ。それを仲睦まじいような感じに言うところがなんか腹ただしくなってくる。


彼奴はなんなんだ! あんな我儘な奴を好きになっていた自分がなんか情けなく感じてくるぞ。

やっぱり女って、見た目だけじゃわかんねぇ生き物なんだ。


実際そうだろ、恵美って料理したところも、手伝っているところも見たことないし、たぶん洗濯も自分でしていねぇんじゃねぇのか?

家の掃除に至ってはミリッツアさんがこまめにやっているけど、恵美はそれを普通に見過ごしている。


見たこと、もとい、入ったこともないんだけど、もしかして恵美の部屋ってごみ屋敷のようになっているんじゃないのか?

ああああ、なんだか物凄くむしゃくしゃしてくる。

なんでここまで考え込まなきゃいけないんだ。

それもこれも北城先生のあのひと言「もうやったのか?」それが原因だ。


「あのぉ……」

「へっ!」


「あのぉ……。なんだかお取込み中のようで申し訳ないんですけど」

一人頭の中で駆け巡る恵美の悪態を考えていた僕に声をかけてきた子。

見たことのない子。話したこともない女子生徒。


「えっと、何ですか?」

「いえ、特別用事という訳でもないんですけど、先ほどからちょっと拝見していたんですけど、あまりもものすごくエキサイトしたというか、リアクションがすごかったんで、つい見とれてしまいまして。もしかしてこの人は私と同類の方ではないかと思い、お声をかけさせていただいた次第です」


「………あのぉ、リアクションって? 何」


「ああ、ご本にも気づかれていないようなほど切羽詰まった状態だったんですね。やはり己の隠された本能が覚醒しだしてきたというところなんでしょう。その覚醒した能力を抑え込むのに必死であったとお見受けいたしますが。さて、どうでしょうか? 本当のところは?」


「はぁ? あのぉ、すみません何を言っているのかよくわからないんですけど!」

「むむむむ、これは、もうすでに覚醒されておるという訳ではありませんよね」

「だから、いったい何なんだその覚醒っていうのは」


「おや、前世の記憶すらないとでも。これはまずいです。闇の世界とこの世界とをつなぐ力を持ったあなたが本来あるべく己のその姿を忘れてしまうとは……」



あああ、もしかしてこの子。中二病っていうやつか。


なんか厄介な子に絡まれちゃったな。


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