第47話 電話ボックス

 近所に電話ボックスがある。


 大通りの歩道にぽつねんと立っているのだが、妙に薄汚れている。


 硝子にやたらベタベタと手形がついているのだ。


 誰かが使っているところなど一度も見たことはないのだが、たまたまタイミングが合っていないだけなのかもしれない。


 しかしこの手形、昼間はそうでもないが、夜になると街灯の明かりや車のライトに照らされてよく目立つ。


 そのせいだろうか。


 電話ボックスのそばを通り過ぎる時、中にこちらを睨む人の顔が見えた気がして、はっと振り向いてしまうことがある。


 しかし、中は空っぽで、周囲には誰もいない。


 そんなことが今でもたびたび起こる。


 とりあえずは硝子の手形を見間違えているのだろうと思うことにしている。

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