第34話 エレベーター
私が昔住んでいたマンションは、古臭い建物だった。
備え付けのエレベーターも、定員は大人四名程度で黄色い扉に窓のついたタイプで、薄汚れた狭い空間は子供心に気味悪く感じていたものだ。
ある日、そのエレベータに乗った時のことだ。
中には私一人だけ。
一階から自宅のある階へのボタンを押してそのまま到着まで待っていると、エレベーターが途中で止まり男性が入ってきた。
ボタンのそばにいた私は「何階ですか?」と男性を見ずに尋ねる。
返事がないので振り返ると、そこには誰もいない。
気味の悪くなった私は、閉じかけた扉の隙間に手を差し込み、エレベーターの外へ飛び出した。
背後でエレベーターの上昇する音がする。
視線をやると、確かにいなかったはずの男性が、エレベーターの中から扉の窓にはりついて私を見つめていた。
それ以来、エレベーターには乗らないようにしている。
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