第346話 音痴
りんどう達を見送ったあとで母屋に入ると、俺は明日の為の下調べをする事にした。
居間の座卓の上にノートパソコンを置いて、隣に座った桃代に事故現場を教えてもらい、まわりの地図や航空写真をネットで見たりする。
それで何かが分かる訳ではないが、多少の土地勘がつくのと、そこでどんな事故があったのかイメージが湧く。
桃代と二人で画面を見ていると、柱に顔を半分隠してクルミが俺を見ている。
長時間待機させてたからな、寂しい思いをさせたのかも知れない、こっちに来いと呼ぶと、嬉しそうにやって来た。
呼ばれて嬉しいクルミは、
え~~いッ、少し落ち着け! 俺はジャングルジムじゃない!
「紋次郎君、紋次郎君、明日下見に行くんでしょう。だったら、わたしも連れてって。川を調べるのにきっと役に立つよ」
「んっ、龍神が居るからな、その心配は無用だぜ。それよりも、いい加減落ち着け」
「だけど、龍神様だといろいろ破壊するよ。それでもいいの?」
「むっ、そういえばそうだな、俺自身もあいつに破壊されそうになった。いいかクルミ、連れて行くのはいいが、化け物が居たらすぐに逃げろ」
「心配してくれてありがとう。そういえば、さっき紋次郎君が言った
「へぇ~~昔はそんなに大きいオオサンショウウオが居たんだ。でも待てよ、
「それが・・・
「
「仕方がないよ。わたし達
「お、おお、意外と身近な場所に居たんだな。なぁなぁクルミ、その川には砂金とか色のついた水晶とかは無かったのか?」
「紋次郎君、また苺さんに怒られるよ。だけど、色のついた透明な石を見つけたら、今度から拾っておくね」
「いいぞクルミ! おまえはなんて可愛いヤツなんだ。桃代さん、これでお宝ガッポリですぜ」
「あのね、わたしが言うのもなんだけど、価値のある石なんて、そうそう見つからないよ。それよりも、椿さん達が帰って来たから、きな粉棒を隠しておかないと、また龍神様に食べられちゃうよ」
「お、お、そうな、そうな。その前に、クルミこれを食べてみろ、甘くて旨いぜ。対価の前渡しだ」
俺は、きな粉棒を数本クルミに渡すと、残りは寝室にある書斎の机の上に置いておく。
許可なく寝室に入ると桃代に怒られるからな、龍神もここには入れない。
だから安全だ。
桃代の言う通り、みんな帰って来たのだろう。外から話し声がする。
椿さんと虎吉、ユリと梅さん、桜子に龍神の順番で母屋に入って来ると、途端にやかましい。
そのまま居間に行き、みんなは
泣くほど怒られていたからな、シバくのだけは勘弁してやろう。
ただ、桃代や梅さんにではなく俺に謝れよ。
ユリに慰められる桜子を無視して、俺は陽が暮れる前に、クルミを連れて龍神のブラシ掛けに川に行く。
面倒くさいが、これも日課なので仕方がない。
それでも、クルミが手伝ってくれるので、最近はずいぶん楽になった。
俺とクルミの苦労を知ろうともしない龍神は、桜子の作った弁当を腹いっぱい食べたのだろう、ご機嫌な口調で歌を口ずさんでいる。
龍神のリラックスタイム・・・その態度にムカムカするが、明日からコイツの力を借りるので我慢するしかない。
ブラシ掛けが終わる頃、りんどうを送り届け帰ってきた苺が龍神のダミ声に気づき、俺達が居る川の広場にやって来ると【うるさいッ】と、怒鳴ってくれたので、音程の外れた龍神の歌から、やっと解放された。
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