第344話 身内感覚
この件は、
受話器を置いて振り向くと、桃代の眉間には
さて、どうしよう?【警察に協力するのは国民の義務ですよ。】なんて言えない。
言えば、【間違って手錠を掛ける、変死体を見つけて通報すれば犯人扱いする、そんな奴らに協力する義務はない!】なんて、俺が桃代に怒られる。
「紋次郎、今のは
桃代が仕事で不在の時に、話をするつもりでいたのだろう・・・
「ねぇ、紋ちゃん。【見つけた時の状況】って、言ってたけど、それって二年前の【マネキン人形に本物が
「なんだ、その訳のわからん事件名は・・・でも、そうらしいぜ、まだ犯人が捕まってないってよ」
「今更、何を聞きたいの? もしも、紋ちゃんをまた犯人扱いしたら許さないからね。ペナルティを科してやるわ」
「また変な事を言い出した。オイラのような平民が、警察にペナルティを科せる訳ないですぜ」
「あら、紋ちゃんは知らないの? グループ会社の真貝警備保障では、警察のOBを随分と再雇用してあげてるのよ」
「いいか桃代、そういうしがらみに俺を巻き込むな。話を聞いてやるくらい、
俺の強い口調で、桃代は静かになった。
まあ、強い口調ではぐらかした、だけなのだが、この状況でマネキンに
イヤ、変死体が俺を呼んでる訳ではない。いくらなんでも火葬されてる
内緒話は済んだのか、桃代は楓と高校時代の話を始め、学校に
考えをまとめたい俺は、居間を出て自分の書斎に行くことにした。
廊下を歩き寝室に行く途中で、扉が空いたキーコの部屋の中の様子が見える。
りんどうが目を覚ました時に、閉じ込められたと感じないよう、扉を開けているのだろう。
【
ベッドの上でスゥスゥと静かに寝息を立てるりんどうは、子供らしい可愛い寝顔をしている。
この顔を見て、どうして男の子だと、俺は思ってしまったのだろう?
そのままベッドの上に腰を掛け、頭を撫でてやると、眠っているりんどうの顔は、うれしそうな表情に変わった。
朝からゴタゴタ続きで疲れていた俺は、キーコの匂いが充満した部屋に、安心したのかも知れない、考えをまとめるのも忘れてりんどうが眠るベッドの
時間にして10分くらいだろう、目を
精神年齢が同じと思われてしまう
りんどうが
苦にもならない。
ただし、ベッドの横に桃代とキーコ、苺と楓が並んで見下ろして居なければ・・・。
どうしよう急に胸が苦しくなってきた。
「どうして、あたしのベッドで紋次郎兄ちゃんが眠っているの? しかも、りんどうさんに抱き付かれて・・・あたしとは一緒に寝てくれないのに」
「え~っとですね。いいですかキーコさん、誤解を招く言い方をしてはダメですぜ。ほら、りんどうが起きたら可哀想でしょう。静かにしましょうか?」
「ねぇ、もんじろう。あなた、りんどうに
「はい、それはもう誓ってそんな事はしておりません。誤解を招いてすみませんでした楓さん」
「いいですか紋次郎さん。
「そうですね苺さんの言う通りです。キーコの匂いが充満してたので、つい身内感覚で寝転んでしまいました」
「紋次郎、夜に眠れなくなるから、そろそろりんどうを起こしてあげなさい。あなたには後で話があるからね」
俺の軽率な行動に、珍しく桃代がヤキモチを焼かなかった。
よかったぜ。
なにせ、楓のことや、
だけど、あとで死ぬほど謝っておこう。
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