第199話 顔合わせ
桃代のところにキーコを連れて行く前に、あらかじめ伝えておかないと、いけない事がある。
あの家の裏山にキーコは封印されていたのだから、あの家に対して抵抗があるのでは? 俺はまず、そこを確認する事にした。
「あのなキーコ、俺が紹介したい人は、いま百合の家に居る。あの家に行くのはイヤか?」
「う~~ん、百合の家に行くのはイヤじゃない。だけど、あの家の裏山にある牢には二度と入りたくない。それよりも、モンちゃんは何を
「うん、牢には絶対入れない。そこは信用してくれ。俺が知ってる件に関しては、あとで詳しく話そう。他にイヤな場所やイヤなモノ、そういうのはあるか?」
「あのね、実は、あたしの体力は、まだそんなに回復してないの。昨日は楽しかったのと、林で休憩をしてくれたから平気だったけど、あまり無理が出来ないの」
「あっ、そうだよな、気付いてやれなくてごめん。あとな、そういう大切な事は早く教えてくれる。おい龍神、俺とキーコを背中に乗せて、桃代のところまで運んでくれ」
「まあ、ええじゃろう。その代わり、落ちんようにしっかり掴まっときんさい」
「いいか龍神、高く浮上して急降下したり、蛇行したり宙返りをすると怒るからな。地面すれすれの安全運転で頼むぜ」
「あのな、そげな事をする訳なかろうが、紋ちゃんはワシをどう思うとるんじゃ」
「どう思うも何も、この島に来る時に全ておまえがやった事だ。もう忘れてるのなら、そこに転がってる石で、頭をどついて思い出させてやるぜ」
「うっ、紋ちゃんはバカじゃけぇ、もう忘れとる思っとったのに、意外としつこい」
「いやいや、元ヘビのあなたに、しつこいって言われたくないですね。いいか龍神、今回は俺一人ではない。もしもキーコに怪我をさせたら、二度とお好み焼きは食えないと思え」
好物のお好み焼きを食べられなくなるのは、さすがに嫌なようで、龍神は何も言い返さない。
俺はキーコを
クッションでもない限り龍神の硬い背中は、キーコの痩せた
そう感じたからだ。
俺の行動を理解したのか、龍神はおとなしく滑るように進んで行く。
キーコは宙に浮きスイスイ進む龍神に、驚き感謝をしながら楽しんでいた。
これで龍神はなんとかなった。あとは桃代だ。
桃代に関しては心配ないと思うのだが、時どき変なスイッチが入るので、正直訳がわからない。
変な素振りを見せて、キーコを不安にさせないよう、俺は常に平静を装う。
龍神はたいした時間を掛ける事なく、ユリの家に到着した。
さすがにこの時間だ、もう起きているとは思う、お願いだから酒は抜けてて欲しい。
俺の後ろにキーコを隠すように、門を越えると玄関わきから庭に回り、建物に隠れながら中の様子を伺う。
すると、縁側に座っている桃代とすぐに目が合い、こっちに来いと手招きをされた。
「ユリと桜子は、こっちに来なさい。探しに行かなくても帰ってきたわよ。さてと、また報連相を忘れたようね。どういうつもり紋次郎」
「うっ、まるで、俺に落ち度があるような言い方。相変わらず姑息な言い回しだな。いいか桃代、俺は
「そうきたかぁ・・・じゃあ今回の件は不問にします。も~う、心配したでしょう。
「そうだよ。あのなキーコ、この人が俺の奥様で紹介したい人の桃代だ。自分の二日酔いを棚に上げて、俺を責める困った人だけど、幼い頃から世話になってる人だから、仲良くしてくれ」
「あ、あのキーコです。よろしくお願いします。本当はキコなんですが、モンちゃんがキーコの方が可愛いって言うから、キーコになりました」
桃代は立ち上がると緊張しているキーコの前に行き、両膝を地面につけて目線を合わせると、ぎゅっとキーコを抱き締めた。
「キーコ・・・今までひとりで、よく頑張ってきたわね。これからは一人じゃない。紋ちゃんもわたしも居る。何があってもわたしたちを頼りなさい」
「・・・やっぱりだ。あたしの思った通りだ。モンちゃんが好きになって、モンちゃんを好きなる人、絶対に良い人だと思った。ありがとう桃代さん」
「よし、挨拶が済んだところで、一緒にお風呂に入るわよ。なんなのキーコ、その髪の毛は? 傷んでパサパサだし、お肌はカサカサ。せっかく可愛いのに勿体ないでしょう」
「えっ? あれ? また急すぎてついていけない。いいの桃代さん、あたしは鬼なんだよ。怖くないの?」
「いいから、さっさと行くわよ。椿さんお風呂を借りるわね。桜子あなたは、キーコの替えの下着を買って来なさい。ユリはわたしの手伝い。紋ちゃんは・・・紋ちゃんも一緒に入る?」
「
「もちろん冗談よ。もしも、わたし以外の女性の裸を見たら、百叩きの刑だから、気を付けなさい」
「また訳のわからん刑罰を科そうとする。いいか桃代、キーコが警戒するような事を言うな」
「んっ? ねぇ紋ちゃん。何か、
「いいから早く風呂にいけ。桜子、おまえに付き合ってやる。さっさと買いに行くぞ」
「え~~ッ、紋次郎君と下着を買いに行くのは絶対にやだッ。婆ちゃん、わたしと代わって。わたしも桃代姉さんと一緒にお風呂に入りたい」
「ほほっ、いいよ桜子。では、紋次郎さん一緒に行きましょう」
「梅さんや、わたしも一緒に行こうかのう。わたしの方がお店に詳しいから、役に立ちますよ」
「そうですね。では、牡丹さんも一緒に行きましょう」
「あっ、ズルいですよお母さん。それでしたらわたしも一緒に行きます。これでもわたくし、値切りの椿と言われております」
桃代はユリと桜子を連れて、キーコを風呂に入れるようだ。
俺はキーコの裸を見たことを誤魔化す為に、桜子に付いて行こうとしたのだが、
それは別にかまわない。
ただ、どうして
商店街に着くまで、俺は百鬼夜行をしている気分になった。
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