第170話 仲良し

・・・えっ? なんで? どうしてここに桃代がいる?

何時いつものように隣に寝そべり、デカい目を見開いてジッと俺を見ている。


あれ? 桃代が来るのは一週間後ではなかったか? 

えっ? もしかして、俺ってば、ここで一週間も眠っていたの?


いやいやいや、そんな訳はないだろう。いくらなんでも、そこまで寝ぼ助ではない。

じゃあ、どうして桃代がここに居る? 

それにこの夢は、やっぱり桃代が見せてる夢なのか?

・・・・・・・・・・・・あ~~~っ、そうかぁ、これも夢の続きなんだ。


バカな俺は夢だと思い、目の前に居る桃代のデカい乳を指ではじいてみた・・・ポヨ~ン。

う~ん、確かな反発力・・・・・・って、待て待て、なんではね返される? なんで手応えがある? 夢ではないのか。


あれ? 桃代の表情が変わった? おや? 桃代の眉間に深いしわが出来た?

マズい? もの凄い顔で俺を睨んでいる?


まさか? これが夢ではなく現実ならば、俺の本当の悪夢は、これから始まるのか?


「紋次郎、今のはどういう意味なの? どうしてわたしのオッパイを指ではじくの? 痛いでしょッ」

「あっと、やっぱり夢ではなかったのね・・・ごめんなさい桃代さん。夢だと思いました。それよりも、どうしてあなたがここに居るの?」


「ふ~ん、紋ちゃんは何時いつも夢の中で、女の人のオッパイを見れば見境なくはじきまくってるの?」

「あのですね桃代さん、謝りますから、人が聞いたらトンデモない誤解をする、そういう言い方はやめてもらえません」


「ふ~ん、自分が一方的に悪いのに、わたしに注意をするの。へぇ~困ったものね」

「ごめんなさい。桃代さんが居るのが嬉しくて、つい本物かどうか確認してしまいました。痛くして本当にすみませんでした」


「そう、わたしが居て嬉しかったの、じゃあ許してあげる。それよりも紋ちゃん、なんでこんな所でテントを張っているの?」

「あ、いや、だって、龍神が居るし。ソロキャンみたいで楽しいから?」


「もうッ、相変わらず一人遊びが好きよね。まぁいいわ、出掛けるから用意をしなさい」

「出掛けるって何処どこに? ピラミッド山の調査? この時間だと少し早くない?」


「いいから、早く用意をしなさい。龍神様は留守番をお願いします。ここから母屋まで往復をしてもらって、疲れてるでしょうから」

「んっ、ワシは別に疲れてないけど、任せんさい。紋ちゃんが昨日買うてきた食糧もまだまだ一杯あるけぇのう」


なるほど、俺が眠っているあいだに龍神を呼び出して、ここまでやって来たんだな。

でも仕事は? 一週間掛かるって言ってたくせに・・・・もしかして、このまま帰るつもりなのか? それとも、あれはウソだったのか? どちらにしてもコイツの行動は、よくわからん。


桃代に連れられて港の近くにある、この島で一番まともなボロい旅館に着くと、ロビーで手続きをして部屋に入り話を始めた。

どうやら、この旅館には、昨日から予約を入れていたらしいが、その事を俺は教えてもらってない。

原因は桜子の連絡ミスで、桃代からは謝罪をされた。


「もう、桜子はどうして宿の事を伝えてないのよ」

「そりゃあ、あれだろう。四人分も部屋を取ってるから、今日来る事がバレると思ったんだろう。何が休みが取れるまで一週間だよ、桃代さんはウソつきですか」


「そうじゃないでしょう。そこは【俺の為に無理をさせてごめん。ありがとう】って感謝をするところでしょう。紋ちゃんは一週間もわたしと離れて平気なの?」

阿呆あほうッ、まだ安全かどうかもわからないのに、おまえに何かあったらどうするつもりだ? 確認の為に、俺が先に来たんだろう」


「また始まった、紋ちゃんの一人暴走。わたしを心配してくれるのはありがたいけど、そもそも紋ちゃんは、心配をする方ではなく、させる方でしょう。過去を振り返って思い出してみなさい」

「桃代さん、わかりましたから、こんな離島にまで来て、くだらない言い合いをするのはやめません」


「そうね、時間の無駄よね。それから、龍神様に聞いたわよ。昨日は【水を浴びただけ】って言ってたけど、実のところ紋ちゃんはフラフラだったんだって、ごめんね。ユリも、ユリの家族もお礼がしたいって言ってたよ」

「いいよ別に、ユリの為にした訳じゃない。ももちゃんが喜んでくれたらそれでいい」


俺と桃代はすぐに切り替えられる。

険悪なムードが長続きする事はない。


俺はシャワーを浴びに行き、桃代はその間に電話をしていたようだ。

お互いに用事が済むと、【港まで桜子と梅さんを迎えに行こう】と桃代が言い出したので、二人で部屋を後にした。

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