第166話 誘拐犯
龍神に聞いた
その邪悪な者は、すでに死んだような口ぶりだったが、俺はそうとは思えない。
もしも、ソイツが
あくまで可能性だけなのだが、相手が化け物の場合は、何があっても不思議ではない。
もちろん龍神の言う通り、強い恨みの思いを残した実体は、
強い恨みの方も、一度は人に取り憑き、ユリの親父を死の直前まで
しかし、まだ油断はできない。
明日にでも、
出た後で、また取り憑いているようなら龍神に流してもらい、二度と入れないように
そうなれば、桃代は文句を言うだろう。
それでも構わない、俺にとって桃代の安全は最優先事項なのだから。
取りあえず、歩きながら色々と考えて、上陸をした誰もいない浜辺まで戻って来た。
今日は、ここにテントを張って過ごすつもりだ。
龍神がいる以上は、下手に宿屋に行きたくない。いや、行けない。
コイツのやる少しのイタズラでも、コイツの存在を知らない人が体感をするとエラい事になる。
あとは、夜中の寝ている時に鱗がピカピカ光ると、UFOが襲撃に来たと間違われる。
自衛隊の戦闘機でも飛んで来たら、エラい事では済まない。
テントを張り終ると、俺は夕食を買う為に中で着替えて、龍神にはテントの見張り番をしてもらう。
龍神は、【一人で大丈夫か】と心配をしてくれるが、コイツが一緒に来ると、俺には別の心配が発生するので、当然一人で買いに行く。
なにせ田舎の離島だ、キャッシュレスではない場合もあるので、何があっても良いように、現ナマをしこたま桃代に持たされた。
港の方に向かえば、何かしらのお店があるだろう。
ユリが自転車で帰ってきた方角に向かい、俺は歩き始めた。
海岸から離れると、
遠くにある山には段々畑があり、柑橘類でも栽培しているのだろう。
道を挟んだ左右には、たくさんの田んぼや畑があり、ところどころに溜め池もある。
少し離れた所には校舎らしきモノが見え、子供の遊び声が聞こえる。
取りあえず港の方まで出てみると、土産売り場が数軒あり、コンビニもあった。
俺はコンビニで食べ物と飲み物を山ほど買うと、今来た道を急いで戻る。
俺を探す、ユリの姿が見えたからだ。
時どき後ろを振り返り、ユリが来てないかを確認する・・・まるで逃亡者だ。
それでも懸命に歩き、また後ろを振り向くと、自転車に乗るユリの姿が遠くに見えた。
白い服から着替えて別の服装なので、まだ気づかれて無いと思うが、このままでは時間の問題だ。
田舎の人間は閉鎖的だ。
自分のテリトリーに入る
だが、一度でも気を許してくれると、とことん面倒見が良くなる。
田舎者のお節介というヤツだ。
桃代はユリの知り合いだからいいかも知れないが、俺は桃代を介しての間接的な知り合いなので、ユリの家に行くと息が詰る。
なので、逃げるしかない。
焦る俺の前方に、一人の子供が立っている・・・・チャンスだ。
この子を上手く利用して、ユリをやり過ごすしかない。
そんな誘拐犯的な事を思っていると、子供の方から駆け寄って来たので、俺はユリに背中を向けてしゃがむと、子供の知り合いのフリをする事にした。
「いいか子供、俺は決してあやしい者ではない。こんな事を言うヤツは、本当はあやしい奴なんだが、俺は本当にあやしくない。だから、防犯ブザーを鳴らさないでください」
「ぷっ、兄ちゃんって、おもしろい人だね。あたしの方から近付いたのに。あたしの名前はキコ、兄ちゃんの名前は?」
「なんだおまえ、なかなか馴れ馴れしいヤツだな。まあいい、俺は紋次郎だ。キーコおまえは少し、俺に協力しろ」
「いいけど・・・ねぇ、あたしは今お腹が空いてるの。紋次郎、何か食べる物を持ってたら、少し分けてよ」
「ほぅ、いいぞキーコ。言いづらい部分をズバリ要求する。俺はそういうヤツが嫌いじゃない。協力してもらう以上は対価を払う。この中から好きな物を選べ」
「わ~い、思った通り、紋次郎はやっぱりあたしの味方だね。それで、あたしは何を協力すればいいの?」
「味方? よくわからないけど、まあ、いいや。いいかキーコ、俺の後ろの方から、自転車に乗った女が近づいて来てる
「ふ~ん、紋次郎はあの女の人に見つかりたくないの? じゃあ、あたしがやっつけてやろうか?」
「やっつける?・・・キーコおまえ、ガキの癖に生意気な事を言うな。って、不味い近づいて来た。急げキーコ、あっちの林の方に行くぞ」
ユリとの距離が縮まったので、俺は会ったばかりのキーコを連れて、林の方に歩き出す。
誰がどう見ても誘拐犯だ。
それでも、キーコがはしゃいでくれたので、ユリには
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます