第124話 反転

大きな心配事がなくなり、翌日の俺はスッキリと目が覚めた。

桃代と桃香は遅くまで話をしていたようで、隣の布団でまだ眠っている・・・


なんで? なんで俺の左右に布団を敷いてるの? 

桃代さん、あなたは俺の隣で眠ると、どうしてそんなに寝相ねぞうが悪いの?

桃香さん、あなたまで便乗して、なんでここで眠っているの?

二人とも、どうしてデカい乳を放り出してるの?


襖の向こうに居る桜子は、何時いつもどうして都合の悪い場面を見てるの?

なんで、そんなにキツい眼つきなの?

俺は朝からタメ息しか出てこない。


「ねぇ、紋次郎君。ついに桃代姉さんをめにしたの? 桃香様まで一緒に乱交でもしたの?」

「あはは~桜子、おまえは一度医者に見てもらえ。そしてデッカイ注射を頭に打ってもらって来いッ!」


「うっ、そんなに怒らないでよ。どうせ何時いつものパターンなんでしょう。それにしてもなんでだろう? 桃代姉さんも桃香様も、わたしと同じ部屋で眠ってる時はこんなに着み乱れないのに、紋次郎君の隣で眠るとオッパイ丸出しだよね」

「いいから、さっさと直してやれ。桃代は二度目だが、今回はどうして桃香まで一緒に居る」


「だからなんでだろうって、言ったじゃない。もしかして、紋次郎君の隣で寝ると、わたしもオッパイをむき出しにされちゃう?」

「いいか桜子、俺をおちょくるつもりなら覚悟をしろ。おまえは下着姿で外に出て、大声で騒ぐアホの子だって、おまえの婆さんにチクってやるぜ」


「うッ、もしかして、わたしの下着姿を紋次郎君は見たの?」

「そりゃあ、見たに決まってるだろう。紋次郎、紋次郎って、当主を呼び捨てにして探してたんだから」


「お願い紋次郎君、ばあちゃんには言わないで! 本家の当主様を呼び捨て、しかも下着姿で外に出たなんて、もしもバレると蔵に閉じ込められて外から鍵を掛けられちゃう」

「ふふふ、蔵かぁ・・・いな蔵、中は暗いんだろう。おまえを助けに来てくれるかもな、俺と一緒に見つけた人たち・・・」


「ヒ~~~ッ! お願いします紋次郎君、どうか呼ばないでください。わたし、昨日の出来事がトラウマになりそうなの。これからは紋次郎君の言う事はなんでもききますから、お願いします」

「バカ、冗談だよ。昨日の事だって俺が呼んだ訳ではない。奴らが勝手に出て来てくれたんだ。どうして出て来たのか分からないのに、俺が呼べる訳がないだろう」


「そうなの? でも、良かったね。紋次郎君のしてきた事が報われたね。ネコも居たけど、あの死んだ人達は恩返しがしたかったんだよ。なんでも屋に居る頃は、さんざん死神紋次郎って煙たがられていたからね」

「あのな、それの言い出しっぺは、おまえだろう。桃代にこの事を知られたらどうなると思う」


「はい、すみません。もう二度と言いません。だから桃代姉さんには内緒にしてください」

「ふわぁ~ 紋ちゃんも桜子もおはよう。それで何? いまわたしの事を話していたようだけど、何の話なの?」


「いいか桃代、何かを聞く前に、まずはパジャマのボタンを閉じろ。おまえはなんてだらしない恰好をしている」

「あれ? どうしてわたしのパジャマは全開なの? まさか! 眠ってるあいだに紋ちゃんがいけないイタズラをしたの?」


「桃代、あなた! わたしがそばに居るのに不埒ふらちな事をするなんて、人としてどうなの!」

「え~とですね、桃香様。桃香様もパジャマが全快で、オッパイが丸出しなんですが気が付いています?」


「あら? わたしまで桃代と同じようになっている。まさか! 眠ってる時にもんちゃんにイタズラをされたの?」

「いいか桃代も桃香も、俺を強姦魔に仕立てるつもりなら覚悟しろ。俺は冤罪だけど自首して、おまえ達とはお別れするぜ」


「また~ッ、紋ちゃんはすぐに自爆しようとする。それは悪い癖だよ。その短絡的な性格を改めさせようと、わたしと桃香様は恥ずかしい思いをしたのに、もっと深く考えなさい」

「桃代、そのさとすような言い方で、自分の失態を誤魔化すのはやめろ」


「う~ん、でも桃代の言う事にも一理あるわね。ねぇもんちゃん、昨日ピンチになった時に、自爆して相打ちに持ち込もうなんて考えなかった?」

「ぐッ、どうしてそれを桃香が知っている。思っただけで、口に出してないのに」


「ほら、やっぱり。あのね、もんちゃんが犠牲になって、みんなが助かったとしても、わたし達は嬉しくないの。その、千年前と変わらない考え方は改めないとダメだよ」

「そうだよ桃香様の言う通りだよ。紋ちゃんは深く反省をして、今後は気を付けてください」


「はい、すみませんでした。今後はバカな事を考えないようにします」


・・・ ・・・なんで俺が謝ってんだ?

俺は至極しごく真っ当な注意をしただけなのに、オッパイが丸出しの二人に囲まれて頭を下げている。

・・・ ・・・あれ? なんだこの状態?

俺は助けを求めて桜子を見るが、ヤツはあっかんベーをしていた。


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