第27話 地下の間

上にある穴とは違い、下に見つけた隠し穴はかなり狭い。俺は落ちないように気をつけてりて行く。

身体からだを中に入れて両手をあげると、鉄板を元に戻しておくも忘れない。

誰も見てないと思うが用心のためだ。


幅のせま梯子はしごりて、これまたせまい通路を歩いていると、モグラになった気分だ。

もしも地震が発生すると、通路が崩落して生き埋めになる。そういう事を考えないのだろうか? 

桃代は不思議ちゃんでは済まない、摩訶まか不思議な人だと思う。


この瞬間地震が発生しないよういのりつつ、地下のと思われる扉の前に、やっとたどり着いた。

鍵が掛かっていれば、やぶってやる。

そんなつもりでいたが、扉はあっさりひらいた。


地下のは、以外とシッカリした作りになっている。

素人しろうとが作った物ではない。

建設会社に作らせたのだろう。

何を考えているのやら、ピラミッドを含めて、こんな注文を受ける建設会社がよくあったものだ。


部屋の中はごちゃごちゃしているが、意外と快適そうな空間だ。

砂が入らぬように靴を脱ぎ、俺は中に入ってみる。

部屋の中には、ハンモックが吊るされてある。

その向こうには数台のモニターがあり、庭の景色が映し出されていた。

あきらかに、転んだ俺を見て笑っていたに違いない。


ハンモックをのぞくと、ついに見つけた。

桃代がスヤスヤと眠っている。

しかし、さすがは穴の中のむじな、どう見てもたぬき寝入ねいりだ。


しかもその姿、ワイシャツにパンツ一枚、俺をおちょくる為の恰好かっこうをしている。

準備万端で待ち受けていました。

そんな感じなのにその恰好、俺は桃代のお腹の肉を鷲掴みにしてやった。


「な、な、何してんのよッ紋ちゃん! やって良い事と悪い事の区別もつかないのッ!」

「あのなモモ、その言葉、そっくりそのまま返してやる。あんなところに落とし穴を作りやがって、俺以外の人が落ちて怪我でもしたらどうするつもりだ?」


「あうっ、そうだけど・・・でも、女性の身体からだを勝手にさわるのはよくないよ」

「そうだな、それの責任は取る。俺を痴漢行為で警察に突き出せ、罪はつぐなう」


「あうっ、そんな事は望んでないけど・・・何か、今日の紋ちゃん怖いね」

「あのな桃代、少し真面目な話しがしたい。まずはそこからりて、ちゃんと服を着てくれ」


幼い頃を思い出した俺は、桃代に言いたい事や聞きたい事がたくさんある。それでも今はそれを我慢する。

桃代は俺の雰囲気で、何かをさっしてくれたのだろう、おとなしく着替え始めた。

俺は着替えが終わるまで、うしろを向いて目をつむり待ち続ける。

そして、桃代が逃げないように注意する。


着替え終わった桃代に呼ばれて振り向くと、小さなテーブルをはさんでやっと落ち着いて話が出来るようになった。

俺は最初に桃代の正体について話をする事にした。


「なあモモ、おまえは幽霊のフリをしてるけど、その理由を聞かせてくれない」

「なっ! 違うの、わたしは本当に幽霊なのよ。それはもうぷるんぷるんの幽霊なのよ」


「意味が分からん。なんだそのぷるんぷるんの幽霊って? よく冷やしたゼリーか?あまりフザケていると、おまえの願いをきいてやらないぜ」

「えっ? わたしの願いってなんの事? わたしは何かお願いをした?」


「モモ、いい加減にしようぜ。おまえが言ったんだろう、ミイラにしろって。それなのに身体からだの無い幽霊じゃあ、俺はどうしたらいいんだ?」

「えっと、そう、あれよ、わたしの身体からだは冷凍保存をされているの。だから好きな時に冷凍庫から取り出して」


「あのなモモ。この家には、おまえの身体からだが入る冷凍庫は無いぞ。それに坊主の草生そうせいは、おまえを火葬して納骨したって言ってたぜ」

「あのハゲ坊主、余計な事を・・・えっと、火葬は火葬でもハロウィンの仮装なの。だから、納骨されたのはカボチャの骨なの」


「モモ、往生際が悪い過ぎる。カボチャに骨があるわけないだろう。昔あれだけ振り回されたのに、ずっとおまえになついてた、俺を信用できないのか?」

「えっ? わたしになついてた? あれだけおかずを強奪されたのに?」


「モモ、あれから俺のクソみたいな人生を考えると、あれは楽しい時間だった。おまえには感謝しかない。だから、おまえの力になりたい。ダメか?」

「うっ・・・でも、わたしは本当に幽霊だから・・・」


「わかった、これが最後だ。モモ、昔にように俺を子分として扱う気は無いんだな? 俺が居なくても、自分で解決できるんだな?」

「だっ、だって・・・だって! 紋ちゃんがいけないんだよ! わたしが苦しんでる時に、そばに居てくれないから!」


「なんの事だ? おまえは何時いつの事を言っている? 俺にわかるように説明しろ」


ふざけた表情が、やっと桃代の顔から消えた。

ただ問題なのは、今の桃代の表情を俺には理解が出来ないという事だ。

コイツは一体何を考えているのやら。


面倒でも少しずつ聞き出すしかない。

コイツと再会し話をしたあの日のように。


ただ、途中で眠らないようにしないと、あの日はコイツを無視して眠り、起きたら居なくなってたからな。



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