第20話 滝
翌日の午前中、俺は滝の前にいた。
桃代は大きな麦わら帽子をかぶり、涼しげな白いワンピースを着ている。
いかにも夏です。そんな
コイツは自分が怪奇な存在という設定を忘れているのかも知れない。
いい加減、コイツの正体を
その為に勇気を出して桃代を誘い、いろいろ思い出そうとしてたのに・・・
従者らしき二人の女性を連れて、滝の前に広がる浅瀬の方で
よせばいいのに全員水着だ。
桃代はあまちゃん達に挨拶をすると、麦わら帽子を下に置き、頭の部分に脱いだワンピースをたたんでしまう。
当然、ワンピースの下は水着だ。
【小学生かッ!】そう言いたい気持ちを我慢する。
それよりも、他人が居ることで俺の計画は台無しだ。
開放的な場所で桃代と話をしていると、
ついでに
そんな前向きで、姑息なことを考えていた。それなのに、俺の計画は全てパーだ。
昨日、変な水着をチョキンした腹いせなのか、グーで殴ってやりたい。
まあ、それは冗談として、しかし困った事になった。
俺はあまちゃんに、どう接していいのか? わからない。
お供の二人は、カブトムシの幼虫でも見るような目をして、眉間にシワを寄せたまま俺を見ている。
こんなアウェー感は、警察で取り調べを受けた時以来だ。
四人共ワンピースの水着を着ている。
あまちゃんは白い水着を着ている。何を着ても上品だし、そつなく着こなしている。
お供の二人は黒の水着で、これまた無難に着こなしている。
桃代は薄いピンクの水着で問題ないと感じたが、うしろ姿を見た時に気が付いた。
腰の辺りに濃いピンク色で、モモのマークが入っている。
まあいい、変な
ただ、モモのマークの下に、更にでっかいモモがある事に気付いて欲しい。
桃代の太いモモと大きいモモの上にモモのマークがある。
何か早口言葉になりそうだ。
それはともかく、俺は水着を持って来てない。そもそも水着を持ってない。
それなのに、桃代が【早く来なさい】って呼びやがる。
もう帰りたい。
そんな弱気な思考しか浮かんでこない。
それなのに、あまちゃんまで俺を呼びやがった。
「紋ちゃんお
「は、はい、今行きます」
どうしよう逆らえない。
覚悟を決めるしかない・・・ ・・・またゴワゴワのデニムで帰る覚悟を。
仕方なく俺はシャツだけ脱ぐと、水の中に
海とは違い、川の水は異常に冷たい。
5分も
あまちゃんとは距離を取り、あまり近づかないようにする。
そうすると、必然的に俺だけ深い方で遊ぶ事になる。
まるでイジメだ。
休憩を取りながら俺だけ一人で遊んでいると、うしろから桃代に抱きつかれて、前のめりのまま足がつかない場所に沈んでいく。
すぐに浮かび
俺はそのまま息を止めると、流れ落ちる滝の水圧に耐えながら目を
海水とは違い、さほど目には
どうやら、人が入れるほどの穴がある。
周りに
自然に出来たものにしては不自然なので、何度か水面に
何も保証はないが、何か行ける気がする。
この時、俺の目はドルマークではなくエンマークになっていたと思う。
当初の予定を忘れて【もしかしてこの先に埋蔵金があるかも知れない】そんなバカげた事を考え始めた。
人が掘った穴ならば、そうでなければ、その必要がない。
そういえば、ここは
はたまた、
いやいや、
もっと言えば、石見銀山からもそう遠くない。
そんな、自分に都合の
桃代はそんな俺を見て、不思議そうな顔をしている。
男なら行けるとこまで行くしかない。
バカな俺は【ピラミッドや埋葬品、それから黄金のマスク】そう騒ぐ、桃代のことを非難できなくなっていた。
この時、俺は【穴の先には財宝がある】
桃代の影響なのかもしれない。
桃代の変なところに、感化されたのかもしれない。
そうではない、俺の欲深い好奇心の
結局のところ、俺は桃代と同じ穴の
しばらくの
作っている時に二人分にしては多い気がしていたが、こういう事だったんだ。
俺は桃代がにぎったおにぎりを、頬張りながら考える。
危険があるかも知れないので、まずは準備が必要だ。
準備をしないで進むのは無謀、準備をして進むのは堅実、俺は堅実な男なのだ。
決して臆病な訳では無い。
そんな事を考えている俺を
誤魔化すつもりは無いが、情報を仕入れる為に駄菓子屋でたくさん買ったチープな菓子をみんなに振る舞う。
これが意外と好評で、お供の二人も俺に対して警戒心を緩めてくれた。
午後からは仲間に入れてもらえて楽しく過ごすが、穴を進んだ先が気になり、何をするにしても俺はうわの空だった。
当然、当初の目的は何も果たしてない。
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