十五夜の日、キミと出逢う ~また逢う日まで~

十五夜の日、キミと出逢う ~また逢う日まで~

作者 橘奏多

https://kakuyomu.jp/works/1177354055309598437


 秋の十五夜の夜、月から来た余命短い美月に一目惚れした高城眞都との出会いが運命を変え、美月は手術を受けて病を治し、彼と年に一度の再会を過ごせるようになる物語。



 信じあう~よろこ~び~を~大切に~しよ~今日の日は~さよ~な~ら、という歌を口ずさみそうになるようなタイトルがついている。十五夜に再会をする約束を交わした話かもしれない。

 全三話で書かれ、サブタイトルが「運命」「再会」「奇跡」となっている。運目の出会いをし、再会して、奇跡が起きるのかしらん。

 なにはともかく「読んでみてのお楽しみ」である。



 ハッピーエンドの物語。

 読みやすく、楽しめた。



 疑問符感嘆符のあとはひとマスあける云々には目をつむる。


 主人公、高校一年生の高城眞都の一人称「俺」で書かれた文体。月での出来事は三人称で書かれている。

 父親は宮司をしている。神社の責任者を務めている神職だ。主人公は毎日のように神社掃除をさせられている。なぜか参道掃除を夜にする決まりになっているという。

 神社に参拝にみえるのは、ほとんどが昼間である。参拝中に本殿に掃除機を書ける音を響き渡らせては、参拝に参られた方にも迷惑。そう考えて、掃除は夜にすることにしたのかもしれない。本殿内ならそれもわかる。わかるのだけれども、夜の参道はあきらかに暗いので、きれいに掃除できるのか甚だ疑問である。掃除は建前で、防犯としての見回りを兼ねているのかもしれない。

 代々のしきたりらしいので、たとえば戦国時代に神社に賊が侵入するということがあってから、不審な輩が夜な夜なやってきていないのか見回りをし、どうせだったら掃除もしようとなり、いまでは掃除がメインになってしまったのかもしれない。

 なので、主人公の「別に朝やっても夜やっても変わらないだろ、絶対」という考えはあながち間違ってはいない。でも最近は、夜な夜な自転車に乗っては高級自動車に傷をつける暇な中高齢者もいれば、高級自動車を盗んで海外へ高く売ろうとする輩もいるし、賽銭箱にちかよって、中のお金を盗み取るおじさんもいる時代なので、主人公の夜の掃除は、神社にとって大事なことなのではないだろうか

 本当のところは別な理由があって、月から美月が来ていることを考慮すると、かつて月の住人がこの神社にやってきたことがあり、次にいつ来てもお迎えできるように毎夜掃除当番を決めて備えていたのが風習となり、理由は伝わらず形だけが残ったと邪推してみる。


「神社の参道の特徴は、とにかく長い」らしいけれど、どれくらいだろう。

 埼玉の氷川神社参道、長野県の戸隠神社奥社参道は約二〇〇〇メートル。

 山形県の出羽三山神社羽黒山参道は約一七〇〇メートル。

 熊本の健軍神社参道は約一二〇〇メートル。

 東京の明治神宮参道は約一一〇〇メートル。

 福岡の香椎宮参道、宮崎の狭野神社参道、岡山の茅部神社参道は約一〇〇〇メートルなどなど。

 主人公の家の神社の参道は、どのくらいの長さがあるのかしらん。落葉時期の掃除はさぞかし大変だろう。


 美月は「見たことも無いとても綺麗」で「綺麗な瑠璃色の目、今にでも地面につきそうな長い黒髪、月のように肌が白く、すらっとした体型の文句の付けようがない」容姿で主人公の好みだったから、一目惚れしたのだろう。

 とはいえ、「急に月から来たと言われても信じられるわけがない。そして、何のために月からこの地球にやって来たのかすら不明」と本人もおもっているように、初対面の彼女に「私は月の姫にあたる存在」で「病を患っている身なのでいつ容態が悪化するか分からない」けど、「綺麗な満月を見るため」に来ましたといわれて、はいそうですかといえるだろうか。でも、主人公はいっている。

 恋は盲目、というくらいだ。

 誰かを好きになるのは、それだけ凄いことなのだろう。

 一年後の再会を約束し、「元々興味がなかった服も雑誌等を見て流行に乗ったり、嫌々やっていた神社の掃除も美月に会いたいという気持ちが支えになり頑張れた」のだから。

 それは彼だけでなく、美月にもおなじことが言えた。

 余命宣告をされ、治る見込みもなかったが「ここにきてようやく治す方法が見つかった」だが、「成功率は十%未満」とごくわずか。

 だけど美月は「私はこの手術を乗り越えてまた地球に行きたい。まだ私はあの人に何も伝えられてないんです!」と、生きる可能性に賭けたのだ。

 病気も治り、再会を果たした二人はめでたしめでたしとラストを迎える。


 この二人は、月と地球の通い婚となるのかしらん。

 それよりも、月に人間が住んでいるという事実のほうが大事件な気がする。この先、月開発が進んでいく中で月と地球とのあいだでトラブルが発生して争いごとにならなければいいなと切に願う。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る