第41話
完全に一人ぼっちのミミがどうしてこの家までたどり着いて来たのか。
その疑問はカエルとミミの会話を聞いているとなんとなく見えて来た。
ミミは【捨てられた町】へ来たとき、本当に一人ぼっちだった。
それを寂しいとも感じないし、こんなものだと思っていたようだ。
だけど数日前、僕の匂いを感じ取ったのだそうだ。
それは知らない人間の匂いだったが、自分の持ち主である愛菜がミミに話していた事を思い出した。
『ルキって言ってね、勉強もスポーツもとてもよくできる男の子がいるの』
僕の事を話す愛菜はいつも頬を染めて、照れくさそうにしていた。
そして、愛菜の服に微かについていた僕の匂いを、ミミは一瞬にして思い出した。
愛菜が好きだった人がこの町にいる。
そう知ったミミはじっとしてなんていられなかった。
持ち主に通じる人間のそばにいたい。
持ち主が好きだった人間のそばにいたい。
そう思い、ここまで来たらしい。
僕はその話を聞きながら微かな吐き気を覚えていた。
ミミが言っている愛菜は僕が知っている愛菜とはかけ離れている。
愛菜が僕を好きだったなんて、そんなことは絶対にあり得ないんだ。
だって僕は愛菜に……。
そこまで思い出した瞬間、僕は勢いよく立ち上がっていた。
大きく肩で呼吸して爆発してしまいそうな自分の感情を抑え込む。
「気分が悪いから横になる」
冷たくそう言うと、僕は部屋へと戻って行ったのだった。
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