第20話

そう言うと、カエルは呆れたような表情をしてそしてまた笑った。



「それがルキのいい所だ。だけどあの女に会えば食われてしまうかもしれないんだぞ」



「うん。そうだよね。できればカエルについて来て欲しいなって思ってた」



「お前、俺が付いてくるとわかっててわざとか?」



そう言うカエルに笑顔を向けて、僕は歩きだしたのだった。



明るい時間に歩く山道は昨日と比べて随分と楽だった。



カエルが僕の隣を歩いてくれていると言う事も手伝い、ほとんど恐怖を感じることはなかった。



「洞窟ってどこにあったっけ」



「道順も覚えてないくせに女に会いに来ようと思ったのか」



カエルはまた僕に呆れている。



「だって、右も左も同じに見える」



「まぁ、この町に来てすぐには無理だろうな。ほら、こっちだ」



カエルが僕の前を飛び跳ねはじめた。



その姿は腐葉土の中に隠れたり、ピョンッと出てきたりしながら僕を誘導する。



どんどん進んでいくカエルに、僕はついていくのがやっとだ。



足元は悪いし下手をしたらカエルを見失ってしまいそうになる。



「少し休憩するか?」



随分進んだところでカエルがそう聞いて来た。



「まだ大丈夫だよ。昨日はこんなにも歩いたっけ?」



「女の魅力に魅了されて、どこをどのくらい歩いたのかわからなくなるんだ。それに女は会話上手だ。知らない間に洞窟まで辿りついてしまうらしい」



カエルがそう言って僕を見た。



全くその通りだ。



僕も昨日は気が付けば洞窟にたどり着いていた。



「もう少しだから頑張れ」



カエルに励まされ、僕はまた足を前へ進めた。



それから10分ほど歩いた時、不意に目の前が開けた。



木々の中に大きな洞窟が姿を見せる。



昼間だというのに洞窟の中は真っ暗で、中にマヤがいるのかどうかわからない。



「ルキはここにいろ。俺が確認して来る」



「大丈夫なの? 相手は蛇だろ?」



「大丈夫だ。俺はカエルだけど、プラスチックでできている。食べたら腹を壊すことくらい、あの女だってわかってるはずだ」



カエルはそう言うと、ピョンピョン飛び跳ねながら洞窟の中へと入って行ってしまった。



僕は洞窟の前まで移動し、そっと中を確認した。



昨日と同じで洞窟の中からはヒヤリとした冷たい空気が流れ出てきている。



本当にここだけ別世界みたいだ。

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