第18話

「そっか……。なんか、ごめんね」



まだ使えるのに捨ててしまった事。



そのためにこんな町に止まる事になってしまった事を申し訳なく感じた。



「謝る必要はない。人間にはその時その時で必要なものがある。次に必要となるものを手に入れるために、いらなくなった物を捨てるのは自然だ」



「僕の事を怒ってないの?」



「怒るものか。俺はお前といられた時間がとても幸せだった。物にとって人から大切にされている時間は最も幸福を感じるものだ」



そう言ってもらえても、やっぱり僕は納得できなかった。



それならなお更壊れるまで使って欲しかったんじゃないかと思ってしまう。



だけど、この町の住人たちは嘘をつかない。



それを信じれば、カエルは本当に僕の事を怒ってはいないということなんだろう。



「それに、人間に対して怒りを持ち続けている物は、昨日の蛇女のようになる」



そう言われて、僕は息を飲んだ。



昨日、白い蛇に巻き疲れて呼吸が止まってしまった時の事を思い出し、強く身震いをした。



恐怖が蘇ってきて両手で自分の体を抱きしめる。



「あいつはこの町に迷い込んできた人の命を食らっているんだ」



「まさか、僕も食べられる所だったの?」



そう聞くと、カエルは大きく頷いた。



「その通り。あの蛇女に食べられてしまった魂は永久的に成仏することはなく、彷徨い続けることになる」



カエルの言っていることはとても恐ろしい事だった。



2度とマヤには近づかない方がいいと思える事。



だけど……「蛇女……マヤがああなったのは、人間のせい?」僕はそう質問をした。



カエルは一瞬言葉に詰まったが「そう言う事になるな」と、小さな声で言ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る