第15話

恐怖で体中が震え、声まで消えて行く。



殺される。



夢なら早く覚めてくれ!!



ギュッと目を閉じてそう願う。



だけど夢は冷めない。



この苦しさも消えない。



冷たい蛇の皮膚が僕の体温をどんどん奪っていく。



もう、ダメだ……。



そう思い、全身の力が抜けていく。



それを見計らっていたかのように蛇は更にきつく僕の体を締め付けて来た。



呼吸が止まり、目の前が真っ白になって行く……。



「ルキ!!」



その声に目を開けると、カエルがいた。



ツルリとしたプラスチックのカエルは額から汗を流し、息を切らしている。



その光景がおかしくて僕はほほ笑んだ。



もう笑い声も出てこない。



「やめろ、蛇女!!」



カエルがそう叫び、蛇の体にしがみ付いた。



「私の邪魔をするな!!」



洞窟内に響き渡るように聞こえて来たその声はマヤさんのものだとすぐにわかった。



鈴の音のようにとても美しい声が、低く唸るような声にかわっている。



カエルは蛇の体に噛みついた。



蛇の力が一瞬だけ緩まる。



しかし、すぐにまた締め付けられてしまった。



蛇に攻撃しているカエルなんて初めて見た。



「くそ! しつこいぞ蛇女! ルキはお前の持ち主じゃない!!」



「人間なら誰でもいい。人間を食べたい」



ねっとりと絡み付くような声。



マヤは人間に執着しているということがすぐに理解できた。



「ルキ。もう一度噛みつくから、その隙に逃げろ」



そんな事を言われても、あの一瞬の間に逃げられるとは思えない。



そうこうしている間にも蛇は僕の体をキツク締め付け、激しい痛みが体を駆け抜けた。



一か八か、やるしかなさそうだ。



「いくぞ!」



カエルがそう言うと同時に蛇の体に噛みついた。



今度はよほど強く噛んだようで、マヤが悲鳴を上げた。



蛇の体が緩まる。



僕はすぐに体をねじり、上半身を起こして蛇を地面にたたき落とした。



洞窟から這い出るとその場に膝をついて肩で大きく呼吸を繰り返した。



この世のすべての空気を肺の中に取り込むように呼吸をしていると、ようやく落ち着いて来た。



「いくぞ、ルキ!」



カエルの声を聞き、僕は無我夢中で山の中を走って逃げたのだった。

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