9-2 選択
「借金が少々……それと……妻が……」
「借金が少々とは、おいくらですか?」
省吾は辺りを見回し、近くに客がいない事を確かめた。
「250万くらいです」
「そうですか。……ではその金額を完済すれば悩みは解決するのでしょうか」
店員は省吾の顔を覗き込んだ。
(そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
いや、それよりも妻に帰ってきてほしい。
それに借金を返したとしてもギャンブルを断つことなどできるのだろうか。)
「完済は今の俺には無理だし、完済したとしても妻が帰ってくるかどうか。今まで裏切り続けて……子供の金にも手を出したし……」
「では奥様が戻って来ないと解決しないのですね」
「大変申し訳ありませんが、初めての方は1つしか願いを受ける事ができないきまりになっております。ですから解決策は1つに絞っていただかなくてはなりません」
(その二択なら、借金完済しかない。
借金さえなくなれば、麻衣子だって戻ってきてくれるかもしれない)
「そういう事なら借金の完済をお願いしたい」
省吾はきっぱりと言った。言った後、俺は風呂屋に何を頼んでるんだ? と思った省吾だったが……
「かしこまりました。それではごゆっくり入浴ください」
梢女という店員は、そう言うと、笑みを浮かべて去っていった。
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