第5話 連鎖
5-1 躾
佐藤 早希 三十六歳
パートで働きつつ、小五になる一人娘
仕事から帰り、洗濯物を取り込んだところで、奈菜穂の担任から電話がかかってきた。
「ちっ!またか」
担任が伝えたいのは、奈菜穂の宿題忘れだった。
「ただいま」
奈菜穂が帰ってくると、早希の怒りは爆発した。
「奈菜穂!あんたまたママに宿題やったってウソついてたでしょう」
早希の平手打ちが、奈菜穂の頭から背中、お尻にとんだ。
「ママ、ごめんなさい!」
奈菜穂は両手で頭を抱え、しゃがみこんだ。
「あなたって子は、何回言ったら分かるのよ!」
「ごめんさい、ごめんなさい」
奈菜穂がどんなに泣こうが謝ろうが、早希の平手打ちは、怒りが収まるまで終わることはなかった。
怒りが収まった後、早希の頭には、次の二文字が浮かぶ。
虐待
これを自ら打ち消すように、自分に言い聞かせる。
「これは躾、これは躾、奈菜穂のためにやってるの……躾、躾、躾」
「ママごめんなさい」
奈菜穂がランドセルに入っていた学校からのプリントを持ってきた。
奈菜穂の表情には、母親に対する恐怖心のみが感じられ、それがまた早希をイラつかせた。
「早希!ママが怖いの?悪いのは早希だからね!そんな顔するんじゃないわよ!」
怒りが収まらないまま、学校からのプリントを見ていると、その中に温泉のチラシが入っていた。
「この湯に浸かれば、どんな悩みも解決!なんでもご相談を 入泉料500円 ── 那楽華の湯──」
(どうしてこんな広告が入ってるの?それにしても
早希は明日、奈菜穂が登校してから那楽華の湯に行ってみることにした。
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