第29話 再会と終わり


 目を開けると、そこは辺り一面真っ白な場所であった。


(ここってもしかして......)


 そう思いながら、周りを見回すと案の定、小さな男の子が立っていた。


{英雄神。お久しぶりです}

{久しぶりだねメイソン}

{一つ質問なんですけど、なんで俺はここにいるのですか?}


 俺は悪魔によって突き殺されたはずだ。それなのに今、こうして目の前には英雄神が存在している。


(ここは死後の世界なのか?)


 いや、そんなことは無い。そうであったら、英雄神と何回かあっている俺は死んでいるはずだ。だったらなんで俺はここにいるんだ? 


{そうだね~。まあ簡単に言えば死ぬ直前で君を引き止めたって感じかな?}

{え、そんなことできるのですか?}

{まあそうだね。何個か条件はあるけどね}

{俺は死ぬのですか?}


 そう、今はそんなことどうでもいい。俺は死ぬのか、死なないのか。もし死ぬのなら、やるべきことは無いが、死なないのなら早く現世に戻してほしい。


{う~ん。今のところ難しいところ}

{それってどう言う意味ですか?}

{まあまあ。そうカリカリしても疲れるだけだよ。君には一つ伝えておかなくちゃいけないことがある}

{......}


 今はそんなことどうでもいいんだよ。あそこに戻れるなら戻って、早くミカエル様たちの援護をしに行かなくちゃ......。


{君が英雄って言われているけど、それは必然的になったものであって、偶然英雄になった人もいるんだ}

{は?}


 それってどう言う意味だ? 英雄になるのに偶然とか必然とかってあるのか? 


{君は僕の力---略奪を持っていて、必然的になった英雄。それとは別に、偶発的にできた英雄がいるんだ}

{それって誰ですか?}


 その時、いきなり眠気が来て、膝を崩す。


{あ~。あの人がきたね。じゃあ}

{え......}

{まあ気を付けてね}


 英雄神が手を振っているのを見ながら目を閉じた。



 目を開けると、目の前にはルーナが涙を流していて、クロエは俺の胸に顔をうつ伏していた。俺はルーナのほっぺを触り、クロエの頭に手を当てながら


「不安にさせてごめん」

「「え!?」」


 二人は驚きながら俺の顔を見てきた。すると、ルーナは徐々に涙を流しながら抱きしめてきて、クロエは何度も謝ってきた。


「よ、良かった......」

「ごめんなさい。ごめんなさい」


(あぁ。俺はクロエにこんな表情をさせてしまったのか......)


「クロエ、本当にごめんな」

「え? なんでメイソンが謝るの?」

「クロエに負担をかけすぎた。ごめんな」

「違う!! 私がもっと注意していれば......」


 そんなわけない。あの時、悪魔がクロエを刺そうとしていたが、きちんと音が聞こえたかと言えばそうではない。聞き取れるか微妙な音であった。だからクロエがミスをしたというわけではない。


「大丈夫。あの人が来るはずだ」

「「え?」」


 英雄神が最後に言った言葉を考えれば、おおよそ来る人は予想ができる。すると、案の定一人の女性が来た。


「回復しますね」

「お願いします」

「あら、あなたは私が誰かわかるのですね」

「まあ......」


 俺とこの人で話を解決していると、ルーナとクロエは首を傾げながら警戒をしていたので


「ラファエル様。ミカエル様とルシファーの戦闘はどうなっていますか?」

「今戦っているところだと思いますよ」

「なら、早めにお願いします」


 俺がそう言うと、ルーナとクロエがラファエル様に


「「早めじゃなくていいです!!」」

「え? 二人とも何をいっているの?」


 早く俺はミカエル様のところへ参戦しなくちゃいけないのに......。


「メイソン、行かないで......」

「そうだよ......。もうあんなの嫌」

「......」


 二人は泣きながら俺にしがみついてきた。


「最初にミカエル様とルシファーが戦っているのを見たでしょ? メイソンでも無理だよ。それに今の体じゃ......」

「お願い......」


 すると、ラファエル様が空を見ながら


「大丈夫よ。あの戦いはもうすぐ終わる。だから軽く回復してからあそこへ行きましょう」

「なんでそんなことが分かるのですか?」


 魔族が関わっている以上、ガブリエル様が神からのお告げを受けたとは考えにくい。だったらなんで......。


「それは簡単よ。そろそろルシファーの力が落ちてくるからよ」

「え?」

「ミカエルとルシファーだと、相性が悪いの。だからこそもうすぐ終わる」


 そう言いながら、俺の傷を癒してくれると


「それにしても本当によく生きていたわね」

「あはは......。本当に謎ですね」


 自分でもなんで生きているのかわからない。


「まあもう終わったし、行きましょうか」


 ラファエル様がそう言って歩き始めたので、俺も立ち上がろうとしたら、思っていた以上に疲労していたようで、膝を崩す。それを見たルーナとクロエが心配そうな表情をしながら肩をもってくれて


「「いこっか」」

「あぁ。ありがと」


 そして、三人でラファエル様の後を追った。そこから数分程歩いたところで、ラファエル様とガブリエル様、ウリエル様が立っていた。俺たちもそこへ行くと、全員がウリエル様とルシファーの戦闘を見ていた。


「そろそろ終わるわね」

「えぇ」

「そうね」


 すると、数分も経たないうちにラファエル様が言った通り、ルシファー様が何かを言ってこの場を去って行った。そして、ミカエル様がこちらに降りてきて、真剣な顔をして俺たちに


「今日はあれだけどメイソンくんたち、明日にでも少し話したいことがある」

「はい......」


 そして後処理は他の人たちがしてくれることから、俺たちは屋敷に戻った。

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