風鳴り

作者 辰井圭斗

ヒトは決して分かり合えない。それでも――

  • ★★★ Excellent!!!

大人に近づくにつれ、嫌でも思い知らされることは、少なくないでしょう。

「議論など時間の無駄」
「結局は強者・多数者の意見が通る」
「意見が致命的に食い違った者同士は、どうやっても歩み寄れない」

本作では大学1回生の主人公の、1年間の寮生活の風景が描かれます。その中で出会った愛すべき先輩達がどうしようもなく溝を深めていく様を目の当たりにして、人間と人間とのあいだに起こるどうしようもなく残酷な現実に気づいてゆく――
その姿が傷ましくもあり、美しくもあり。ふと、この世の不条理に慣れ切ってしまった(というよりかは、見て見ぬふりをするようになってしまった)浅ましい自分に軽く羞恥を覚える心地がするようでした。

若さゆえの、純粋な年長者に対する憧憬や、内面の葛藤といった繊細な機微が、とある京都の情緒あふれる風景とほどよく溶け合った、佳き作品です。

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